Middle Age II: a part of the world
−3
「予定って、デンマークたちだったのね」
フランスが意外そうに言った。このときはまだ、西欧政治と北欧政治はあまり接点がなかったからだ。
「どうしたんだ、揃いも揃って」
イギリスの問い掛けに、デンマークが得意げな顔をする。
「俺が今回北欧のリーダーになるからよ、アルレシアに話しようと思って来たんだ」
「リーダー?」
首を傾げるアルレシアにデンマークが「天使…!」と呟く。
使いものにならなくなったのを見兼ねて、ノルウェーが口を開く。
「あんこの上司が、俺らの上司になっただけだべ」
「あぁ、同君連合ね」
スウェーデンの王位を巡るすったもんだの末、デンマークの王女でありノルウェー王の妻であったマルグレーテが、息子にデンマークとノルウェーの王位を継承させ、これよりナポレオン戦争終結のウィーン条約まで続くデンマーク=ノルウェー王国が成立。
その後血縁からスウェーデン王位も継承し、その王子を操るマルグレーテは北欧3王国の支配者となった。それをカルマル同盟という。
アルレシアは理解し、それから怪訝な顔をした。
「なんでわざわざ俺に?」
「それは簡単なごどだっぺ!」
がし、と立ち直ったデンマークがアルレシアの肩を掴む。「いてぇ」とそれは外したが、デンマークは気にしたそぶりもなく続ける。
「アルレシアもこの我がカルマル同盟に入らんけ?っちゅー話だ!」
「…は?」
場に沈黙が漂う。
「いやいやいや、デンマークは何を言ってるの!?アルレシアは北欧じゃないからね!?」
フランスが空気を破って言うと、今度はデンマークが目を瞬かせた。
「フランスこそ何言ってんだ?アルレシアは北欧だっぺ」
ここで、初めて北欧勢と西欧勢の意見の対立が表面化した。
「いったん落ち着こう、お兄さん冷静、よし。アルレシアが北欧だと思う人挙手!」
フランスが整理するように挙手を促すと、デンマークを始め北欧の四人が手を挙げた。
「じゃあ、西欧だと思う人?」
フランス、イギリス、スペインが手を挙げる。
「あれ、プロイセンはどっちなの?」
「中欧、だな!」
「はいプロイセンは除外」
「なんでだよ!」
プロイセンを除き、西欧と北欧が睨み合う。
「どうしてこうなった」
置いてきぼりを食らったアルレシアはぼんやり考える。
デンマークとイギリス、フランスは怒鳴り合っている。
スペインはいじけるプロイセンに呪詛をかけ、スウェーデンはフィンランドとなにやら話し、ノルウェーはデンマークをつついている。
騒がしい。それに尽きる。
だが、アルレシアは自分の頬が緩んでいることに気付いた。
―――楽しいんだ、今
こうやって大人数でいることが、他の国と話すことが。
傷付け合うこともあるけれど、長く生きる分、楽しい時間も長いだろう。
「おい、」
愉快なやつらがこちらを向く。
「もう面倒だから、全員上がれよ」
久しぶりに満面の笑みとやらになってしまう。致し方ない、どれほどこんな時代を待ちわびただろうか。ずっと求めていた国たちと、こうやって気の置けない会話ができることが、嬉しくてたまらなかったのだ。
アルレシアのそんな笑顔を見て、各国はもはや呆然となる。
「改宗しそ…あ俺もうキリスト教だった…」というプロイセンの声は、その場の全員を代表していたとフランスは後に語る。
これから、世界はどう変わっていくんだろう。何が変わらないんだろう。こいつらと一緒にいられるこれからを思うと、アルレシアはえらく機嫌がよくなるのを感じた。