Modern: Revolution for Revolution
−百年戦争season2
「くっそ、あいつまたやりやがった…」
新築の屋敷、リビングのソファーでイギリスと二人でワインを飲んでいると、イギリスは秘書からの報告を聞いて頭を抱えた。
***
「フランスの野郎…」
「また?」
アルレシアは呆れたように背もたれに寄り掛かる。
「何やらかしたんだ?」
「どうやらフランスの東側の領土をずっと拡大してるらしくてな」
1678年より、フランスは国境東部で一方的に領土継承を主張しては併合して、を繰り返しているらしい。
オランダや南ネーデルラントが手に入らなかったにも関わらず、まだやっているようだ。
「元気だなあいつ」
アルレシアはワインを一口飲んでから、側に立つイギリスの秘書に声をかける。
「他の国はどうしてる?」
「ドイツ諸邦は緊張しています。オランダさんはイライラしてました」
その様子が容易に想像できて苦笑する。
「フランスは何考えてんだよ…前回みたくなるのがオチだってのに」
「どうだろうな?」
イギリスの言葉へのアルレシアの返答が引っ掛かったのか、秘書が「と、言いますと?」と促す。
「お前の上司とフランスの上司、仲いいだろ?それにスペインの上司は虚弱だから子供ができない…オーストリアもトルコと睨み合ってるし。こりゃ、動くな」
落ち着いて淡々と言うアルレシアに、イギリスは顔をしかめた。
「なんでそんな知ってんだよ」
「人当たりがいいからな」
くすくすとアルレシアは笑う。
明らかに皮肉に、イギリスは頬を引き攣らせた。
「お前やっぱなんつうか…とんだタヌキだな?」
「おっと手が」
「うわっ!やめろ眉毛抜くな!」
1683年までにルクセンブルクも併合すると、第二次ウィーン包囲に勝利したオーストリアがトルコとバルカンで戦争を始めた。
東の勢力が削がれた今、という意図だろう。
フランスはイギリスの上司と手を結び、周囲に威圧をかけ出した。
1685年にはプロテスタントの追放も行い、いよいよ争いの火の粉が上がり始めた。
1685年。
ドイツの領邦の一つ、プファルツ選帝侯領の継承をフランスが主張すると、オーストリア、スペイン、オランダなどが翌年にアウクスブルク同盟を結び、スウェーデンもこれに賛同した。
一方イギリスは、上司はフランスと組んだが議会はそれに反発し、オランダと急激に接近していた。
「アルレ、イギリスおるか」
屋敷を訪れたオランダを迎え、アルレシアは辺りを見渡した。
「上司の部下が屋敷に来てイギリスと話してる。議会の人なら議員が集まる建物に案内する」
慎重に小声で言えば、オランダも頷いた。
「…また上司変わんのかな?」
含みのある言い方をしてやれば、オランダは片眉を上げる。
「多分な」
「なんか最近忙しいな」
立て続けにたくさんの出来事が起き、ほとんどフランスの仕業だ。
「迷惑なやつやざ」
「金はあるんだよなぁ」
「金はな」
1688年、ケルン選帝侯領でもフランスは選挙に介入し、決着がつかないと分かるとプファルツ、ケルンに侵攻。
年末にはイギリスで名誉革命が勃発し、オランダの上司がイギリスの上司を兼任することになった。
1689年にはイギリスがアウクスブルク同盟に参加し、大同盟戦争が開始されたのだった。
***
一方でアルレシアは、戦争には参加せず新たな貿易を始めていた。
スペインが発見した、新大陸。
アメリカとの貿易だ。
イギリスもやっているらしいのだが、具体的には何をやっているのかは知らなかった。
だからとりあえず現地に行き、何ができるか見に行くことにしたのだ。
はるばる大西洋を渡り、アメリカのイギリス領に立つ。
「広いな…」
広大な大地、野生味ある原野。
何もない風景に地平線が見渡せ、空は広々と開放的だ。
思わず気持ち良さに伸びをすると、背後から足音がした。
振り返れば、若い少年。
「誰?」
少年は首を傾げる。
「イギリスの友達、かな」
一目で同類と理解し、目線を合わせて微笑む。
「君は?」
「俺はアメリカって言うんだ」
「そうなんだ。俺はアルレシア。時々来るから」
「もう行っちゃうのか…?」
寂しい、という感情を全面に出す様子が、イギリスに重なる。
(兄弟ねぇ)
確かにな、と思う。
アルレシアはアメリカの頭を撫でて笑った。
「すぐ来るよ」