Contemporary I: devil’s warfare
−初世界会議




「もうあれから70年近く経つ、そろそろ君だけでも世界各国の面々と同じ卓上についたらいい」

そんな上司の言葉に、アルレシアは珍しく動揺を隠せなかった。


***


WW2が終わり70年近い月日が流れた。

目まぐるしく変わる国際情勢の中、国連にもEUにも属さないアルレシア。

単体で各国と貿易はしているが、WTOや他の様々な協定を結ばないアルレシアには天然ガスや石油を輸出することができなければ破綻していただろう。

できるのはFTAなど二国間協定くらいだ。



それと言うのも、大戦中の国王の勅令による。

ドイツとの不可侵条約締結の際、破ったら未来永劫に渡り国交を断絶するという内容で出された。

結局ドイツは条約を無視して侵攻し、首都を爆撃され国王もそこで命を落とした。

勅令は守られ、終戦し西ドイツが主権を回復しても、冷戦が終わり統一されても、ドイツとは国交を回復させることはなかった。

そしてドイツと関わらないため徹底的に避け、国連などに参加しない状況が生まれた。


当然、国の化身たるアルレシアは同類たちによる世界会議には参加して来なかった。


それが、ここに来て。

「勅令を破ることに…」

「大丈夫、会議に出るだけで、彼と話さなければいい。もっとたくさんの人と一緒に話すべきだ。世界会議はとてもユニークだそうだし」

いやそれは会議は踊るを繰り返しているだけであって有意義なものじゃない、とは思うだけだ。

上司の配慮は分かる。

そもそも上司の命令に逆らうわけにもいかない。

「…分かりました」

「オランダさんを誘うといい」

「そうします」

会場であったり必要なものであったり、いろいろ不慣れなことを教えてもらうためにも、一番信頼できるオランダに頼るべきだろう。


さっそくアルレシアは自室に戻るとオランダに電話をかけた。

『…ん、誰や』

相変わらずの柄の悪さに苦笑しながら、「アルレシアだ」とだけ伝える。

『アルレか、どないした』

「いや、それがさ…上司に言われて、世界会議に出ることになったんだ」

『……は?』

珍しい、オランダの抜けた声。

「だから、世界会議に」

『具合悪いんか、それともチューリップティー飲んだんか、やから無理して飲まんと言うたんや』

まくし立てるオランダは本気で動揺しているようだ。

なかなかに面白い。

だがお互い暇ではない。

「オランダ、俺本気だって。正気だし。チューリップティーも心配されずとも飲まねえよ、草の味しかしねえし」

『そう、か…って何が草の味や』

「メシマズ系男子は黙ろうか。そんなことより、本題は世界会議初めてだからついて来てってことなんだけど」

『頼む相手メシマズ呼ばわりか』

「嘘、じゃないけど謝る。もう言わねえから」

『はぁー…まぁええわ。ほんなら、当日パリの空港で待ちねま。そっから飛行機でアメリカんとこ行くで』

「ありがと。オランダ大好き」

『抑揚なさすぎやボケ』

「それはお前に言われたくねえよ。…じゃあ詳細はメールで。今日はありがとな」

『おう』

電話が切れると、ソファーに倒れ込んだ。

「アメリカか、やっぱ…遠いな…」

ドイツもいるし、気疲れするだろう。

「なんとか…なるか…?」

激しく心配だが、ここまで来たら仕方ない。

アルレシアは諦めて仕事にとりかかることにした。


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