Contemporary I: devil’s warfare
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当日。
パリの空港でオランダと落ち合い、二人でアメリカへ飛んだ。
会場はニューヨークのビルらしい。
久々の二人きりであったが、オランダは飛行機に乗るなり寝るという暴挙に出た。
「…ドイツ対策してくれるっつったのに」
機内で、ドイツとどうやって鉢合わせずに会議をやり過ごすか一緒に対策を立ててくれると言っていたのだが、反故にされそうだ。
「ちっ…枕代わりにしてやる」
久々に会うオランダはやはり大きく、座っても差がある。
アルレシアはオランダにもたれかかるようにして体を横に傾け、低めの体温を感じながら目を閉じた。
この姿勢の悪さならすぐ起きるはず。
起きたらドイツ対策を一人で考えよう。
そんなことを思いながら意識を手放した。
***
「おい、起きねま」
体を揺さぶられ、アルレシアはぼんやりとしながら意識を回復させた。
「…んー…」
「そろそろ着陸やから」
「んー…ってはぁ!?」
着陸、という言葉に覚醒した。
さらに自分の体勢に気付くと、もはや声も出ない。
アルレシアは、オランダの膝の間に腰を置き、横向きにオランダに寄り掛かっていた。
誰がこの姿勢にしたかなど考えるまでもない。
「…どういうこと?」
「寝づらそうやったから」
それは見越していたが、この優しさのような拷問は予想外だ。
なんて姿を晒していたのだろう。
恥で憤死しそうだ。
「これなんてアナーニ…」
「捕囚したろか…?」
耳元で低く囁かれ、鳥肌が立つ。
「ぅあ…アホ!俺のが年上なんだからな!」
アルレシアは席に戻り、シートベルトランプがついたためシートベルトをした。
「こんな長い時間寝とったんに年上なぁ…食事持って来たCAにも寝顔見せよって年上なぁ…」
機嫌がいいのか饒舌だが、苛立たせる言葉しかない。
「オランダなんて…PIGSに巻き込まれて不景気になってろ!」
「洒落にならん」
ニューヨーク、マンハッタンの市街地に入った二人は、昼食がまだ(アルレシアだけ)なため、食事をとることにした。
会議場があるビルの近くのレストランに入る。
「あ、俺ドルねえや」
「石油売っとんのにか」
「財布にないんだよ。てわけで、ごちそうさま」
「何言うてんねや。きっちり後で払ってもらうで」
「がめつい男はモテねえぞ」
「アルレがおるからええわ」
「俺別にオランダとどうこうした覚えねえんだけど」
「じゃあ新しく刻み付けたる…今晩からな」
「エロ親父か。フランスみたい」
「…すまんかった」
「それどういうこと!?」
「え、フランス?」
「…なんでおんねや」
テンポよく続いたオランダとの会話に、突然フランスが乱入してきた。
「親分もおるでー」
フランスの後ろからニョキっとスペインも現れる。
「久しぶり、というか偶然だな」
アルレシアが相変わらず平坦に言えば、フランスとスペインが顔を見合わせる。
「お兄さんたちは世界会議前にランチしてるだけだけど…アルレシアはなんでここに?」
「これから近くで世界会議やでー?」
「知ってる。参加するからな」
「あーそっか参加するからね」
「せやな、それなら…って」
「「はぁ!?」」
店内に二人の大きな声が響く。
店員がこちらを一瞥したが、よく世界会議に来る国たちが騒がしく食事をするため、いつものことだと放置だ。
「どうしちゃったのアルレシア、だって今日も世界会議には…その…」
「ドイツおるんやで!?」
「わぁストレート」
二人の噛み合わない感じは昔から変わらない。
それを見てきたアルレシアも特に動じず、「上司に言われて。ドイツとは話さないようにする」と答えた。