双子のかたち−7
ゴールしたあと、面接会場へ案内された。プレゼントマイクは、「今年はやべぇな…」とつぶやきながら灯水を廊下の先へ指示してくれた。
そこを一人で歩いていると、途中で大柄な背中を見つけた。あれは、前の組で焦凍に何か言われていた風の個性の少年だ。
「ねぇ、君」
「んあ…あれ、あんた…」
中学生とは思えない体躯の少年は、坊主頭の凛々しい顔だちをしていた。灯水の顔を見て驚いているあたり、焦凍の血縁と気づいたのだろう。
「ひょっとして、あんたもエンデヴァーの息子か!」
「そうそう、さっき一緒だったヤツの双子の兄」
「え!全然似てない!!」
「二卵性だからね」
いちいちうるさいというか、騒がしい男だ。だがあけすけな様子は好ましくも思える。根がまっすぐな人なんだろう。
「さっき、焦凍…俺の弟がなんか失礼なこと言っちゃってたよね、ごめん」
「や、あんたが謝る必要はない!…俺は夜嵐イナサ、あんたは?」
「俺は轟灯水。君に不快な思いさせちゃったの、俺が勝手に申し訳なく思ってるだけだからさ、気持ち受けとっといてくれたら嬉しい」
イナサという少年は、一瞬ポカンとしたあと、ニカりと笑う。無邪気な印象を受ける笑顔だ。
「あんた、いい人だな!俺ぶっちゃけエンデヴァーのこと好きじゃないし、あの弟の方も好きじゃないけど、あんたは好きだ!」
「そりゃどうも。きっと、雄英にしてもどこにしても君はヒーローになれるだろうから、これから一緒に協力する機会があればよろしくね」
「おー、こちらこそ!あ、そだ、連絡先渡しとくな!これも縁だ!!」
「え、あ、ありがと」
「じゃ!」
イナサはさっとメモ用紙にメッセージアプリのIDを記すと、自身の面接会場へ向かってしまった。豪快な性格のようだ。荒々しく書かれた紙に苦笑して、灯水も面接会場へ向かった。
普段は価値がないと周りに辟易としていたが、さすが雄英の推薦入試だ。エンデヴァーの息子だろうとなんだろうと、実力がものを言う。あとの組である灯水が追い付いたことで、灯水のタイムが焦凍やイナサに並ぶものだったと分かっていたのだろう。こちらの実力を認めつつ、しかし負けているとも思っていなさそうだった。対等だったのである。
雄英に入りたい、改めてそう思った。
***
無事に面接も終えると、灯水は焦凍と揃って帰路についた。
あそこまで個性をフルで使ったこともそうないため、非常に疲れている。筆記や面接の精神的疲労もあった。
「つ、疲れた…」
「面倒だったな」
焦凍も気疲れはしているようだったが、灯水ほどの消耗は見て取れない。体力面はまだまだだ。学ラン姿に戻った焦凍の横顔を見上げていると、その目には朝ほどの殺気は見えなかった。
「…なに見てんだ」
「相変わらずイケメンだなぁって」
「そっくりそのまま返す。まぁ、お前は可愛いけど」
「だーからそういうのいらないって」
普段の軽口も言い合うと、やっと日常に帰ってこれたようだった。イナサのことを聞いてみようかとも思ったが、他人に興味を示さない焦凍に聞いてもムダだろうと思いなおす。
「はぁ〜、お腹空いたからそば食って帰ろ」
「あったかくないやつか」
「は?冷たくないやつでしょ」
「……間を取って直帰はどうだ」
「賛成」
ちなみに、双子だから好物がそばというのは一緒なのだが、焦凍はざるそばのような冷たい方、灯水は鰤そばのような温かいものを好む。2人ともどちらかしか食べられないというわけではもちろんないのだが、この好みの差はまったく相いれない。
結局帰って冬美の作った夕飯をおとなしく待つことにしたのだった。