英雄の学び舎−5



「すっげぇな轟!」

「なんださっきの!スチーム!?」


駆け寄って来たのは、上鳴と切島、瀬呂、そして葉隠と芦戸だ。興奮したように褒めてくるが、そこには畏敬というより、何かを得ようとする姿勢も見えた。やはり、中学までとはまるで違う。


「うん。俺と焦凍、あいつは二卵性の双子でね、個性も同じ半冷半燃なんだ。って言っても、焦凍は両方はっきりと分かれてる状態なのに対して、俺は混ざってる状態なんだ」

「体の片側で氷、もう片側で燃やすっつーことか?」


合点がいった瀬呂が言った通りなので頷くと、上鳴は「ほえ〜」と感心する。


「すごいねぇ!灯水君は混ざってるから、氷じゃなくて水蒸気にして出してんだね!」

「そういうこと。氷、水、熱湯、蒸気っていう風に使えるよ。その代わり、焦凍みたいに炎は出せないんだ。操るだけ」

「いや、操れるだけですげーよ!にしても、蒸気で移動するみてぇに工夫しだいでいくらでも応用効くよな」


切島は顎に手を当てて感心したように言った。すると隣の芦戸が「ねぇねぇ!」と声を上げる。


「葉隠は灯水君って呼んでるんでしょ?あたしも呼び分けるのにそっちで呼んでいい?」

「好きに呼んでもらっていいよ」

「おっけー!よろしくね灯水!」


轟と呼ぶとどちらか分かりづらい上に、お世辞にも焦凍は愛想がよくない。空気の読めるクラスメイトたちは、焦凍に積極的に関わるのは嫌がられるかもしれないと判断しているようだった。そういう意味でも、下の名前を呼ぶのは灯水の方にしたらしい。


「じゃあ俺も!俺は切島、よろしくな灯水!」

「俺は上鳴な!よろしく、灯水!」

「俺は瀬呂ね、灯水、よろしく」


男子3人も笑顔で名前を呼んでくれた。この5人はクラスの盛り上げ役をやるようなタイプなのだろう、屈託のない様子で、灯水も安心できる。


「こちらこそよろしくね」



***



その後も灯水は基本的には焦凍と測定を続けていった。
第2種目の握力は2人とも個性を使いようがないので、焦凍が46キロ、灯水が39キロ。
第3種目、立ち幅跳びは逆に個性フル活用できるので、焦凍は330メートル、灯水は上限の400メートルだった。助走なしで飛ぶだけなので、焦凍は氷でアーチを作って飛び灯水は蒸気で飛んだ。

第4種目の反復横飛びは2人とも氷を張って滑ることで好成績を出し、ボール投げは個性が使えないので焦凍が65メートル、灯水が55メートルだった。
上体起こし、長座体前屈も個性は使えず普通に行い、最後の持久走は推薦入試と同じように個性を使い、1500メートルを2人とも2分台でゴールした。

個性を使っての「ヒーローらしい記録」を出せたのは、焦凍も灯水も4種目。灯水はもとの運動能力はクラス内でそう高い方ではないと考えられるので、他の種目はパッとしない。
クラスメイトたちはそれぞれ一つは飛びぬけた記録を出している。

個性が分からなかった麗日は、無重力という個性のようで、ボールは地球の重力を脱出して計測不能な領域まで飛んでいった。結果は「∞」、そんな記録があるのかといったところだ。
他にも、上鳴は帯電という電気を纏う個性、切島は全身を非常に硬質にできる硬化、口田は動物を操り、耳郎は耳たぶのイヤホンで心音などを爆音にできる。峰田は頭のボールのようなものをもいでいたが、どうやら粘着性のあるそれをただ頭から生やしているだけのようだった。だからこそアシストに非常に有用だが。
緑谷もよく分からない。何やら強化系の超パワーのようでボール投げで700メートル台の記録を出していたが、指を骨折していた。
爆豪は爆破、手から爆発を起こせる。

そしてスバ抜けた個性だったのが八百万だった。同じ推薦入学者だ。

八百万は上流階級では有名な大富豪で、一応上流階級に属する轟家の2人も名前は知っていた。個性は創造、なんでも、分子配列や構造を知っていればなんでも生み出せるらしい。
それによってバイクやプレス機などを生み出し、6種目において素晴らしい成績を出していた。

すべての種目が終わって全員が最初と同じように集まると、相澤がスマホを操作する。


「んじゃ、パパッと結果発表」


普通の体力テスト同様、各種目の評点を合計したものがトータルスコアになる。ランキング形式で一括開示するとのことだ。
スマホからホログラムが起動すると、空中に大きくランキングが現れた。

結果、1位は八百万で、2位が焦凍、3位が灯水だった。個性を使っていない種目の差が焦凍との差だろう。そして4位は爆豪で、以下飯田、常闇、障子と続く。


「ちなみに除籍は嘘な。君らの最大限を引き出すための、合理的虚偽」


最後の最後に相澤はにやりとして言い放つ。数瞬後、クラスの驚愕の絶叫がグラウンドに響き渡ったのだった。


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