英雄の学び舎−4
日本社会が直面するのは、至らぬ法整備によって一向に減らない個性を使った犯罪者、敵(ヴィラン)の犯罪、さらには事故や災害などあまたに上る理不尽。それを解決するのがヒーローの仕事だ。
そのために、雄英高校は生徒たちに常に試練を与え、徹底的に扱く。
「
Plus Ultra」という精神だ。
「持久走で個性使っていいとか良かった…」
「灯水体力ねぇもんな」
隣の焦凍に安堵の声を漏らすと、焦凍は中学時代を思い出して納得する。体力面で課題がある灯水は持久走が得意ではなかった(それでもクラス1位だった)が、個性を使えるなら楽だ。
推薦入学者としては、ここで変な成績は出したくないところだ。
***
まずは第1種目、50メートル走。灯水も焦凍も6秒台前半が普段のタイムだ。体力より筋力や走るフォームがものを言うので、これについて焦凍との差はあまりない。直線を走るだけなので、それぞれが個性を使うということの思考を始めるのに最適だろう。
出席番号順に2人ずつ行われていく。ゴールの計測ロボットがタイムを算出するらしい。
最初の2人、青山と芦戸は個性をがっつり使っていた。金髪のどこかエレガントを装う青山は腹部からレーザー光線を出せるようで、後ろ向きにレーザーを射出して飛ぶようにしていた。ピンク肌の女子、芦戸は酸を出し、それによって滑ってゴールした。
「1秒以上射出するとお腹壊しちゃうんだよね」となぜか格好つけて言う青山に、芦戸がドン引きしていた。
続いて長い黒髪の女子蛙吹と飯田。蛙吹はカエルの個性ということで、蛙飛びで進む。飯田はふくらはぎにエンジンがついており、マフラーが肌から出ている。さすがの速さで、飯田のタイムは3秒04だった。
次の麗日と尾白という男子は、先の組に比べると普通だった。麗日はどんな個性を使っていたのか分からないが、尾白は尻尾がついており、それを地面に叩きつけて跳躍することで進んでいた。2人ともタイムは7秒台。
続く金髪の上鳴と赤髪の切島は、どうやら個性を使う場面ではなかったようで、普通に走っていた。普通に走ったが、身体能力が素で高いようなので6秒台と速かった。
その次の組は背が高く、口田は普通に走り、砂藤は走る直前にお菓子を食べてハイになっていた。口田は7秒台、砂藤は5秒台だ。
異形型で腕がいくつもある障子、パンクな出で立ちの女子である耳郎は個性を使わず普通に走り、障子は5秒台、耳郎は7秒台だった。必ずしも個性を使えるとはやはり限らない。個性を使える場面とそうでない場面の理解をさせる目的もあるのだろう。
個性を使える場面が多いほど成績は良いはずだ。
続くしょうゆ顔の瀬呂、鳥頭の常闇は個性をがっつり使った。瀬呂は腕の関節からテープを出せるようで、それを使って跳躍する。常闇は黒影という影のような実体のある生き物?を体内に宿しており、黒影に地面を駆けさせていた。2人ともタイムは5秒台前半である。
そしてようやく、焦凍と灯水の番がやってきた。
「次、轟双子」
まとめて呼ばれるあたり、合理的という言葉が好きらしい相澤らしさと感じる。2人でスタートラインにつくと、そういえば本気でかけっこを競うのは初めてだと気付く。
これは勝ちたい、と思って蒸気の準備をした。
「位置について、用意、スタート!」
号令と同時に、灯水は大量の蒸気を噴き出した。地面から浮き上がり、一気に地面が通り過ぎる。横では焦凍が推薦入試と同じように氷を連続発生させて進んでいた。
気体より固体の方が反動の力が強いため、やはり焦凍の方がほんのわずかに前へ出る。だがパッと見ただけでは2人は同時にゴールしたように見えただろう。
一瞬でゴールした2人の頭上に、ロボットから結果が言い渡される。
「轟焦凍、3秒31。轟灯水、3秒38」
「ちっ、負けた」
「あんま変わんねぇだろ」
焦凍は冷静に言うと、自分で出した氷の始末のため戻る。
一方で、灯水のところには何人かが近づいてきた。