生来、将来、信頼−13
「動いていいか」
「いいよ…」
焦凍は両腕を灯水の両脇について、近い距離で腰を動かし始める。ぐ、と押し込まれ、ものが出ていく度に中が引きずられて鈍い快感が走る。
そして引いてから再び中に押し込まれる。
「っ、うっ、んん、はっ、あっ、」
「いたくねえか」
「だい、じょうぶ…!」
何とか答えると、焦凍の自身が先ほどの前立腺をおもむろに突き上げた。ゆっくりだったとはいえ、確実に圧し潰すような形になったため、強すぎる衝撃となった。
「っあぁっ、!!」
「ここ、か…!」
焦凍は見つけたとこを集中的に突き始めた。本格的に腰の律動が始まり、断続的に前立腺を襲う刺激は、脳を直接揺さぶる。
「あっ、んぁっ、!ぅあっ!!」
「灯水、灯水…!」
前立腺を突かれる度に焦凍を締め付け、焦凍もその刺激の強さに目を閉じる。そしてうわごとのように灯水の名前を呼びながら、再び頭を撫でつける。色々とぎりぎりだろうに、それでも灯水に対する配慮があった。
「焦凍…!おれ、もう…!」
「っく、俺も、だ…!」
2人揃って限界が近づく。連続して敏感なところを突かれる灯水も、初めての強すぎる感覚に翻弄される焦凍も、もうそのときは近い。
焦凍は指を輪のようにして灯水の自身を擦る。その直接的刺激、ついに灯水は目の前が真っ白になるような快感に包まれた。
「〜〜〜ッ!!」
「くっ…!」
灯水が白濁を吐き出すと、ついで焦凍もゴム越しに中で精をぶちまけた。
2人の荒い息だけが室内に響く。
「はぁ…はぁ…灯水、大丈夫か」
焦凍はゆっくりと引き抜くと、ゴムを外してから灯水を抱き締めた。ごろりと横向きになり、焦凍の右腕に頭を乗せられる。そのまま胸元に抱き込まれ、完全に覆うように包まれた。
「…がんばったな」
労わる様に後頭部を撫でられる。その感覚にひどく安心して、眼前の胸元にすり寄る。
「…俺はずっとそばにいるよ、焦凍」
そしてそう静かに言うと、焦凍はより強く抱き締めてくる。
「…こんな幸せなのに…俺は、本当……」
「まだ言ってるし…」
だが気持ちは分かる。こんなにも幸福で心地の良い行為なのに、あのときはまったくそんなことはなかった。気持ちの伴う行為であることが大前提だからだ。
「まぁ、そんなに罪悪感あるならさ、態度で示そうよこれからは」
「態度?」
「俺のこと傷つけったっていう自覚あるんでしょ?それなら焦凍がきちんとその責任取らなきゃね」
「指詰めんのか」
「俺はヤクザか」
やはり予想だにしない言葉を返す焦凍である。
呆れて苦笑しながら、灯水はその背中に腕を回した。
「彼氏様らしく、俺のこと甘やかしてもらわないとね」
「そんなん…俺へのご褒美じゃねぇか…」
「別に罰とは言ってないよさすがに。傷物にしたなら大事にしろよってことな」
「当たり前だろ。割れ物注意ってステッカーあったら貼ってる」
「人をガラスのハートみたいに言わないでよ、ガラスのハートお前じゃん…」
まったく、と思っていると、焦凍はふと、しみじみとしたように口を開いた。
「爆豪に、将来どういう関係になりたいか考えろって言われた。そうやって灯水のこと冷静に捉えて、自分に必要なこと考えるんだと。そんで、自分がそういう将来像に必要なこと得るまで…灯水には待っててもらう信頼が必要だって」
「さすがの爆豪君って感じだね…一緒に独立して事務所開こうって言ったの焦凍じゃん。俺あれ楽しみにしてるんだからね」
「…確かに、そうだな。俺が言ったんだったな…待っててくれるか、俺が追い付くまで」
「焦凍ならすぐ追いつけると思うけど、まぁ、遅かったら俺が迎えに行くよ」
そう言うと、焦凍の抱き締める力が緩む。腕の中から見上げると、焦凍の耳が赤くなっていた。照れている。
「ほんとずりぃよ、お前」
「それはお互い様じゃない?」
灯水だって同じようなことを焦凍に対して思うときが多々あるのだ。だから、恋人なんて2人はやっている。
「……灯水は、なんつか、灯台みてぇだな」
「灯台?」
「そ。もしくは、水辺の澪標」
どちらも船舶の安全な航行のための道しるべとなるものだ。澪標はとりわけ古文の世界で登場する。
「いつだって、俺のことを照らして導いてくれんのは、灯水だ」
灯水は、誰かにとってどうしようもない状況を変えてくれる奇跡のようなヒーローになりたいと、あの神野区の夜に思った。ナイトアイ事務所でのインターンで、社会を照らす存在の1つになりたいとも決意した。
灯台や水面に立つ澪標のように、誰かを導けるのなら、明るい方へ導きたい。
かつて、焦凍には明るい方へ向かって欲しいなんて思っていたが、今、焦凍に言われて思う。
一緒に、明るい方へ進んでいきたいのだ。
「…焦凍、俺たちは双子で恋人だ。だから、一緒に成長しよう。守り守られってのより、支え合って、互いに高め合うような、そんな関係がいい」
「…そうだな。ずっと、隣に立って、同じところを目指そう」
2人でなら、きっとどんな暗い世界でも、照らしていけると思うのだ。