生来、将来、信頼−12
焦凍はローションをつけた指をそっと後ろに宛がう。そして、ゆっくりと円を描くように小刻みに優しく動かしながら中へ推し進めていった。
少し苦しいが、思っていたような痛みはない。
「痛くねぇか」
「平気」
「ちゃんと言えよ」
「分かってるよ」
だんだんと指が奥まで差し込まれていく。灯水は力を抜いて、なるべく下半身を脱力させた。力の逃げ先が欲しくて、焦凍のシャツの裾を掴むと、焦凍はその手を握ってくれた。
「掴んでろ、力籠めていいからな」
「ん、」
指は2本に増やされ、圧迫感が増す。なんとなく、シャツがはだけたまま過ごす時間が長いことが肌寒く感じる。もちろん、体温の調節は簡単だ。しかも今は夏場である。そうではなくて、心の話だ。
「焦凍、寒い」
「お、分かった」
ちょっとくらい我がまま言ってもいいだろうと思って言うと、焦凍は器用に片手で自分のシャツを脱ぐと、上半身を傾けて灯水を抱き締めた。右手は依然として後ろを弄っており、焦凍の肩口に顎が当たるような形だ。
すると、焦凍は個性を使ってじわりと温かくなった。体温を上げているのだ。他人から与えらえる温もりが欲しいのだという灯水のことを、きちんと理解してくれたらしい。
焦凍からじんわりと伝わる熱のおかげで、より体は弛緩する。いつの間にか3本に増えた指も苦しくはない。
灯水を抱き締めながら指を差し込むのは手首に負担がかかるだろうに、焦凍はまったくそれを感じさせなかった。
そろそろ後ろの感覚にも慣れて来た頃、突然、後ろに大きな衝撃が走った。
「っあ、!は、え、なに、」
「前立腺だろ。最初から感じるヤツとそうでねぇヤツがいるらしい」
「んぁ、そ、っか…俺、才能あんじゃん…」
「俺にしか見せんなよ」
「当たり前、ひっ、あぁっ、ちょ、待っ、」
前立腺とやらを突然責め立てられて、灯水は喉の奥がひくつような快感にもだえる。言葉をろくに紡げないような強い刺激に、生理的な涙すら浮かんだ。
「しょ、と、それ、マジ、だめ…!」
「もうイきそうだな。そろそろ大丈夫か…?」
「はぁ…はぁ…、大丈夫だから、早く…」
とんでもない衝撃に息を切らし、これ以上集中的にいじられたらまずいと、早く入れるよう焦凍に言う。焦凍は頷くと、自分の下も脱いで、ゴムを装着する。前も思ったが、随分立派に成長したものだ。どこがとは言わないが。
ゴム越しに焦凍は自分のものにローションをつけて、灯水の後ろに宛がう。
「…大丈夫か」
「…うん、」
さすがに少し緊張しながら受け入れる。焦凍は、ゆっくりと、ものを灯水の中に押し入れていく。
ぐっと指とは比べ物にならない質量のものが入ってくる。少し痛みが走るが、一度手足にナイフが刺さっているのでそれに比べたらどうってことはない。
それよりも内臓を圧迫される苦しさの方が強かった。
「息、しろ、灯水…!」
「はっ、はぁ、ふっ…ん、」
言われるがまま息を吸おうと努める。灯水が息を吐くのに合わせて焦凍は更に奥へと進み、息を吸うときには一度止まって待ってくれる。
そうして、ついに焦凍の自身がすべて中に埋め込まれた。
「入った…!」
「入ったの…?」
「あぁ」
焦凍も苦しそうな表情をしているが、何よりも、真に繋がったという事実が、2人のことを満たした。離れていた分を埋めるような、今までのどんな距離も近いような、そんな感じたことのない近さだった。
「焦凍…」
「灯水、」
名前を呼ぶと、灯水の求める通りに、唇が重なる。いや、焦凍も同じタイミングで同じことを求めていただけかもしれない。
温かいキスの間に、後ろは焦凍のものを完全に受け入れて、その広がりに慣れる。