死穢八斎會戦/前編−2


数日後、灯水が緑谷とともにインターンのため名古屋へ向かおうとすると、切島や蛙吹、麗日と同じ道中となった。
たまたま行く方面が同じだけだと最初は思っていたが、降りる駅も曲がる角も同じで、これは様子がおかしいと思っていると、ナイトアイ事務所の前にはビッグ3も揃っていた。

更に2階の会議室に入れば、そこにはヒーローたちがずらりと並んでいる。蛙吹と麗日、波動が属するリューキュウ、切島と天喰が属するファットガムもいる。
他に知っているヒーローとしては、相澤とグラントリノがいた。

もちろんナイトアイと相棒のバブルガール、同じく相棒で頭がムカデのようになっているセンチピーダーもいる。他のヒーローは有名な人物ではなく、いったいどういう基準で集められたのか分からないメンバーだった。

雄英生徒たちが集まったため、ナイトアイが声を張ってざわつく会議室に呼びかける。一同が鎮まって注目すると、ナイトアイは口を開いた。


「あなた方に提供していただいた情報のおかげで大幅に調査が進みました。死穢八斎會という小さな組織が何を企んでいるのか、知りえた情報の共有とともに協議を行わせていただきます」


***


ヒーローたちは室内で長机を四角く囲み、ナイトアイとスクリーンを前方に事務所ごとに席に着く。ナイトアイは椅子に座って、相棒のバブルガールとセンチピーダーがスクリーンの脇に立ってこれまでの報告を始めた。


ことの発端は2週間前、とある強盗団が犯罪中に引き起こした事故だった。警察が事故としたその一件に疑問を感じたナイトアイ事務所は、事件に死穢八斎會の関係性があると疑って調査を開始。センチピーダーが組の渉外動向を調べるうちに、死穢八斎會と敵連合との接触が確認された。

敵連合の件を中心的に扱う警察の塚内と協力するグラントリノがこの調査に加わることになり、ナイトアイ事務所もHNでの情報協力を求めた。
聞き慣れない単語に、麗日は隣に座る波動に尋ねる。


「HN?」

「ヒーローネットワークだよ。プロ免許を持った人だけが使えるネットサービス」


ヒーローどうしの情報交換を行うためのネットサービスで、各事務所の活動報告や、他の事務所への協力要請ができるシステムだ。
どうやら基本的なもののようで、緑谷の隣に座る浅黒い肌のヒーロー、ロックロックが顔をしかめた。


「雄英生とはいえガキがこの場にいるのはどうなんだ?本題の企みにたどり着く頃にゃ日が暮れてるぜ」


そんな不機嫌そうな言葉に、椅子を吹っ飛ばして立ち上がるのは巨体のヒーローであるファットガムだ。


「ぬかせ!この2人はスーパー重要参考人やぞ!」

「ノリがきつい…」


そのファットガムが示すのは、切島と天喰だ。よく分かっていない切島がポカンとして、天喰が注目されてしまったことで俯く。
2人が重要であることも、離れた江洲羽市のヒーローがいることも疑問となった一同に配慮してか、ナイトアイは直接説明を行う。


「八斎會は以前、認可されていない薬物の捌きをシノギにしていた疑いがあります。そこでその道に詳しいヒーローに協力を要請しました」

「昔はそういうんのゴリゴリに潰しとりました!」


ファットガムは麗日たちに配った飴を大きな手のひらで思い切り握りつぶす。そして、ファットガムが得た情報を述べた。


「そんで先日の列怒頼雄斗のデビュー戦!そこで今までに見たことない種類のモンが環に打ち込まれた!…個性を、壊す薬」


撃たれた天喰は今は回復しているらしい。ざわつく室内に対して、ファットガムと、個性が似ている相澤が説明を行う。
いわく、相澤の個性は人体の個性因子を止めるもので、天喰に撃たれたものは個性因子を破壊するものだった。幸いにも自然治癒で回復する程度のものでしかなかったようだ。
切島は硬化によって銃弾を弾き、それによって中身がそのままの実物が出に入った。そこから出て来たものは、なんと人体の一部。

そして、ファットガムとリューキュウが解決した先日の二つの事件は、どちらも個性の力を増強させる違法薬物によって引き起こされており、それを売買する経路の中間に八斎會との関係があった。
これだけならその関係は希薄だが、現在の八斎會のトップである治アの個性はモノを分解し治す、つまりオーバーホールすること。更に、出生届のない娘が確認されており、その娘の名前はエリ、先日緑谷とミリオが遭遇した子供だ。エリは、おびただしい包帯を巻いていた。


「まさか…そんなおぞましいこと…」

「超人社会だ、やろうと思えばなんでもできちまう」


リューキュウが表情を硬くし、グラントリノも不愉快そうにする。まだ理解できていない様子の切島が疑問符を浮かべると、ロックロックは「分かれよな」と呆れた。


これは、治アが個性によってエリを「分解」し、その体を銃弾に封じ、その後バラバラにされたエリを「治した」ことで作られたものだ。社会に出回るということは、試作品段階のものを含めれば、エリは何度も体をバラバラにされていることになる。


187/214
prev next
back
表紙に戻る