死穢八斎會戦/前編−3
その後会議は、エリの居場所の特定と保護をヒーローたち一丸となって行うことで一致し、エリの居場所をできるだけ高い確度で特定するために各ヒーローが情報収集にあたることになった。有名ではないヒーローがいたのは、八斎會の施設がある街で活動する者たちで、この捜査で土地勘を発揮してもらうためだった。
会議が終わると、大人たちの話し合いがあるので、灯水たちは1階の応接ブースで座って待っていた。その間に、ミリオと緑谷がエリと遭遇し、その場で仕方なく治アに連れていかれるのを見るしかなかったことを話した。
眼前でエリを救えなかった2人の話に、初めて聞いた切島たちは沈黙する。
「悔しいな……」
自分のことのように顔を歪める切島に、普段からは考えられないほど落ち込むミリオ。誰もしゃべれずにいると、相澤が下りて来た。
「…通夜でもしてんのか」
「先生!」
すぐに蛙吹が反応すると、相澤はその呼び方を制する。
「学外ではイレイザーヘッドで通せ。いやぁしかし…本当は今日は君たちのインターン中止を提言する予定だったんだがなぁ…」
「ええ!今更なんで!!」
それに切島が立ち上がって驚く。相澤は灯水を、そして緑谷をちらりと見た。
「連合が関わってくる可能性があると聞いただろう。そうなると話は変わるんだ」
まさに誘拐されてしまった身である灯水は思わず俯いた。しかし相澤は灯水についてはあまり懸念していないようで、むしろ緑谷の方を困ったように見た。
「ただなぁ緑谷…お前はまだ俺の信頼を取り戻せてないんだよ。残念なことに、ここで止めたらお前はまた飛び出してしまうと確信した」
先ほどの会議でも、緑谷はミリオととともに椅子を蹴倒して立ち上がり、エリの保護に燃えた。謹慎したことがあるという身でもあった。
「俺が見て置く。するなら正規の活躍をしよう、緑谷。分かったか問題児」
相澤が拳を緑谷の胸元に充てると、緑谷は一瞬泣きそうな顔をした。しかし、すぐに引き締める。
その横で、天喰が口を開いた。
「顔を上げてくれ、ミリオ…」
「ねぇ私知ってるの、ねぇ通形。後悔して落ち込んでてもね、仕方ないんだよ。知ってた!?」
波動もいつもより静かに落ち着いた声で言った。2人の励ましの言葉に、ミリオは強く頷いた。
「…気休めを言うつかみ損ねたその手は、エリちゃんにとって必ずしも絶望だったとは限らない。前向いて行こう」
「はい!」
やはりヒーローらしく、そして教師らしく相澤が言えば、緑谷も勢いよく立ち上がって叫ぶように返答した。切島も大きな声で「一生ついて行きます!」と言って相澤に拒否されていた。
「…とは言ってもだ。プロ同等がそれ以上の実力を持つビッグ3はともかく、お前たちの役割は薄いと思う。蛙吹、麗日、切島、轟兄、お前たちは自分の意志でここにいるわけでもない。どうしたい」
そんな相澤の質問に、麗日がまず立ち上がって答えた。
「先…っ、イレイザーヘッド!あんな話聞かされてもう、やめときましょとは言えません!」
「イレイザーがダメと言わないのなら、お力添えさせて欲しいわ。小さな女の子を傷つけるなんて許せないもの」
「俺らの力が少しでもその子のためンなるなら、やるぜイレイザーヘッド!!」
相次いで答えた蛙吹と切島に続き、相澤が灯水の目を見る。灯水も、ずっと黙っていたがはっきりと意志を述べる。
「俺は一度攫われてしまったけど…次は救ける側になります。そのために、ここにいます」
「…意思確認をしたかった。分かってるならそれでいい。今回はあくまでエリちゃんという子の保護が目的、それ以上は踏み込まない。もし連合が出てくるようなら、それまでだ」
「了解です!!」
こうして、灯水たち雄英生の参加も決まった。しばらくはヒーローたちによる情報収集が行われ、エリの場所が特定できしだいすぐに捜索する。それまでは待機だ。