死穢八斎會戦/後編−2
灯水はエリを抱き締めて屈んでいる状態で、地面に手をついてそこから氷結を放つ。小規模ながら素早いそれを、ミリオがうまく避けて治アに向かわせる。
治アは氷に触れると分解し粉々にした。それを更に尖ったつららのようにすると、思い切りミリオに投げつけた。
ミリオは簡単にそれを躱し、蹴りを入れる。
治アはミリオの中段の蹴りを避けるため飛びのくが、灯水は地面に這わせた水の糸を通して治アの右足を凍らせた。
その右足によって、大きく後ろに下がった体のバランスと取るはずだったが、足が動かず治アは尻もちをつくように倒れる。
そこにミリオは殴り掛かった。治アはそのまま倒れると地面に触れて、地面から鋭く尖った柱をミリオに向かって突き出した。
それが肩をかすったミリオは後追いをやめて距離を取る。
一方で灯水は今度は地面に触れる治アの手も凍らせた。瞬時に治アは氷を破壊し、ミリオに向けてコンクリートの針を何本も突き立てる。ミリオは避けることこそできたが、治アからは距離を取らざるを得なくなり、灯水のもとまで後退した。
その間に治アは足の氷を分解して立ち上がる。
「灯水君、フォローいい感じだぜ!その調子で俺と治ア、両方の動きを予測して戦ってくれ!」
「分かりました」
ミリオの攻撃モーションと治アの防御・回避、またはその逆もそうだが、そうした動きを予測して、治アに隙を生じさせることが灯水のできるフォローだ。
氷結を防がれてしまう状況で、一度治アが地面に触れて個性を使えばあっという間にこちらまで攻撃が及んでしまうこともあり、決定打に欠ける灯水の単独戦闘は現実的ではない。ミリオの近接戦による治アの攻撃封じと、そこで生じた隙で戦闘不能にすることが必要だ。
「仕方ない、こちらも遠距離攻撃でいくしかないか」
「来るよ」
ミリオが身構える。
同時に、治アは一気に地面を分解し、大量のコンクリートの針が津波のように押し寄せて来た。エリごと灯水たちを串刺しにするつもりなのだ。
灯水はエリを抱きかかえたまま蒸気でジャンプし、飛び出してくる柱の上に出る。そこから、すぐに灯水は手の平から大量の水を噴き出す。とてつもない勢いの水流となった水は文字通り鉄砲水である。
それを治アに叩きつけると、治アは地面に手を触れていられずに流される。更にそれを凍らせると、治アを氷に閉じ籠めた。
それによって地面の変化が終わり、灯水は平らなところに降り立つ。ミリオもすべて避けていた。
治アが氷を破壊しきる前に、灯水は再び水の糸を治ア周辺に展開させ、同時に治アのいる辺りに腰から下げた手榴弾を投げつけた。
蒸気が爆発的に噴き出して治アを見えなくすると、灯水は糸に集中した。指の先に動きが伝わったときが、治アが動いたときだ。それによって、向こうはこちらの場所が分からずともこちらは治アの場所が分かる。
「…きた、スパイダーガイザー!!」
治アが糸に触れた瞬間、場所が判明し、灯水は間欠泉をぶっ放した。
それは最初に壁に巡らせておいた糸から伝わったもので、横方向から間欠泉が治アを襲う。
大量の水の音と、湯気が立ち上った。
直撃したはず。灯水は蒸気と湯気の向こうを見つめる。
するとその直後、地面が割れて分解され、巨大な針となって突き出してきた。それはすぐ目の前で始まったため、避けきれない。
「ぐぅっ…!」
「灯水君っ!!」
灯水は咄嗟にエリを庇い、足元に分厚い氷を出現させたが、左足のふくらはぎと右腕、左の肩をコンクリートの針が抉る様にして掠った。
途端にカッと燃えるような熱を感じ、そこから引き攣るような痛みが脳天を揺さぶる。
以前にステイン戦でナイフが刺さったが、今回は抉られているため、肉が削がれている。その痛みは銃創に近く、あまりの痛みに意識が飛びそうだった。