英雄の学び舎−8


訓練は、設定として敵が核兵器を持って潜伏し、それをヒーローが確保するというシチュエーションになっている。ヒーロー側の勝利条件は敵全員の捕獲ないし核兵器の回収、敵側の勝利条件はヒーロー全員の捕獲ないし制限時間いっぱい核兵器を守ること。
核兵器にヒーローが触れると回収とみなし、捕獲用の確保テープを相手に巻き付ければ捕獲となる。

制限時間は15分、敵側に有利な状況である。

試験場となるビルの地下に用意されたモニタールムに待機組は集まり、オールマイトとともに見守る。敵はビル内に入ってセッティングを行い、5分後にヒーローがビルに入る。
最初の組はヒーローチームに緑谷と麗日、敵チームに爆豪と飯田となっていた。

ビルのあちこちにつけられた監視カメラの映像がいくつも壁面のモニターに映し出され、全員でそれを見守る。オールマイトはバインダー片手にじっくりと見ていた。音声はオールマイトのみ聞こえるようインカムをつけている。教師らしい姿に、オールマイトが先生をやるということに実感が沸いた。


「どうなるかね…」

「状況が有利なのはヒーロー側だが、この組み合わせだと緑谷たちの方が不利だな」

「そうだね、ヒーロー側は各個撃破されたらひとたまりもないし、2対2でも攻撃力に乏しいヒーローチームが負ける。緑谷君たちが核兵器を前に2対1でやれればいいけど…」

「敵もそれを見越して、飯田をビル内の哨戒に当たらせて爆豪が核兵器を守る配置につけるよな」


開始を前に焦凍と分析していると、近くにいた八百万も加わった。


「しかし爆豪さんの個性は核兵器の近くで使うには問題がありますわ。かといって爆豪さんが同じ部屋であっても核兵器から離れれば、麗日さんの無重力によって簡単に回収されてしまう」

「頭良くない敵ならそうなるだろうね。でも、もしも知識のある敵なら、ミサイル型の核兵器が電子式で、起爆スイッチや安全装置の解除さえ気を付けていればむしろ衝撃に強いことを知って動く」

「いずれにせよ、緑谷が核兵器担当の気を引いて麗日が隠密行動をしねぇ限りは、あの2人相手だと近づくこともできねぇ」


淡々としゃべっていると、上鳴と切島が少し引いたように笑った。


「お、お前らすげぇな、コメンテーターみてえ」

「つーか灯水たちの言う通りなら、緑谷たちけっこー苦戦…」


上鳴が言いかけたところで開始を告げるブザーが鳴った。同時に、定点カメラに爆豪が突然姿を現し緑谷たちに迫る様子が映し出される。


「…マジか」


思わずそう言ってしまうと、焦凍は無表情で八百万はため息をついた。
先ほど話していた通り、敵チームは2人で守れば安パイ、誰かが攻めるにしても機動力のある飯田が最適だ。だが、爆豪はそんな定石無視して飛び出してしまった。飯田の慌てている様子からして、連携が取れていないのだろう。


「なんか爆豪君…緑谷君によく食って掛かるよね」

「そうか?」

「ほら、昨日の個性把握テストでもさ、緑谷君のボール投げ終わったところで爆豪君がちょっかいかけようとして相澤先生に止められたじゃん」

「覚えてねぇ」


焦凍ははっきりと断言した。他人に興味がないのは健在のようだ。個性や傾向など、これから戦闘などを行っていくには必要な情報は記憶しているようだが、個人的なことはまったく覚えていないようだった。


「そういう…にしても、変なの、あの2人。謎ばっか」


個性が判然としない緑谷、高校生にもなってガキのようにつっかかる爆豪。一応あだ名のようなもので呼び合っていたから、面識はあるはずだ。それなのに、この歪な関係。特段知りたいわけでもないが、不思議な人たちだな、と思った。


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