英雄の学び舎−9


結果、全体としては緑谷と麗日が勝利した。
緑谷が爆豪との戦闘中に麗日の真下に移動し、爆豪の攻撃の隙をついて上階をすべてパンチの風圧で吹きとばした。その風圧によって麗日がいる部分の床だけが吹き飛び、その瓦礫と床から外れた柱で麗日が飯田に攻撃。飯田がそれに対処している間に、麗日が核兵器に触れて終了となった。

しかし、緑谷は爆豪に受けた傷やパンチで負った怪我によってボロボロの満身創痍となり、麗日は個性の使い過ぎの反動によって嘔吐していた。


「負けた方がほぼ無傷で、勝った方が倒れてら…」


呆然としたような切島の声が落ちる。壮絶な戦いを前に、クラス中が声をなかなか発せなかった。


「勝負に負けて、試合に勝ったというところか」

「訓練だけど」


黒いマント姿の常闇に、蛙吹が返す。そう、これはあくまで訓練。なのに、これだけボロボロになってしまった。戦闘の中で爆豪が放った爆撃によってビルは半壊している。

緑谷以外が戻って来たところで、講評の時間になった。すぐに反省することで、確実に自分の至らなかったところを理解するのだ。学習の基本である。


「今回のMVPは飯田少年だ!」

「勝ったお茶子ちゃんか緑谷ちゃんじゃないの?」


するとオールマイトは、突然最も良かった生徒に飯田を選んだ。モニターで見ていれば、特に目立った働きはしていないように見えた。まぁ、この中で言えばそうなるだろうと思う。疑問に思ったらしい蛙吹は、指を口元に当てて首を傾げる。


「なぜだろうな〜、分かる人!」

「はい、オールマイト先生」


そこで手を上げたのは八百万だった。オールマイトに促されると、答えを話し始める。

八百万の語ることは灯水も思った通りだった。

まず爆豪については、モニターで見えていた通り私怨によって単独行動をした。さらに隠れ家であるビルを大規模に破壊するというミス。これは緑谷もそうで、私怨に応戦を続けさらに核兵器のある上階に向かって床を吹き飛ばす大規模攻撃。
麗日は気のゆるみや最後の攻撃の粗さが減点だ。

そう考えると、終始核兵器を核兵器として扱って行動していた飯田が、最も訓練で設定された状況に順応していてベストな行動をとっていた。

推薦入学者の的確な指摘に、爆豪はずっと俯いていた。



***



場所を変えて2戦目、ヒーローチームの焦凍と障子、敵チームの灯水、尾白、葉隠の戦いだ。くじなのにたまたま双子で引いてしまったこと、個性把握テストの上位2,3位であることもあって、移動する際にクラスがざわついていた。


「どうする!?」


ビルの中、核兵器の側で3人で簡単な作戦会議に入る。相手はクラス内でも非常に強い2人だ。葉隠はワクワクとしながらグローブを振り回す。


「ネックなのは障子君。彼の個性がよく分からない…でも、あの複製腕の先に目とかついてたから、複製した腕の先に色々出せるってとこかな」

「俺もそうだと思う。轟は?」

「焦凍は氷と炎。その気になればビルごと凍らせられるし、たぶんそうしてくる」


焦凍はきっと、時間をかけずに終わらそうとするだろう。尾白と葉隠を無力化し、そして灯水を各個撃破する形だ。至近距離で凍らされてしまえば、灯水が氷から脱出するより早くテープに巻かれてしまう。


「他意はないんだけど、たぶんあいつは2人のことをナメてかかってくる。でも、2人が無力化されなければ勝機がある。向こうが俺を主力と思ってる限りはね」


焦凍と灯水が互いをよく知りすぎて心理戦のようになっており、戦闘訓練という一般化された訓練の意味をなくしてしまいそうだが、それはあくまで2人の話。
この戦いの主力は尾白と葉隠。灯水はあくまで、デコイだ。


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