USJの試練−2


午前中の必修科目が始まる前、朝のHRの時間に相澤がいつもの低いテンションでやって来た。予鈴が鳴ったら席に着くという相澤の調教はすでにA組に染みついている。


「昨日の戦闘訓練お疲れさま。Vと成績見させてもらった」


講評の紙が入っているのだろう封筒を教卓に置いて、相澤は爆豪と緑谷に小言を言った。2人が特に目立って派手なことをして目についたからだろう。

簡単にそれを済ませると、相澤は本題に入った。


「さて、HRの本題だ…今日は君らに…」


含みを持たせた言い方に、沈黙が支配する教室の空気が張り詰める。あの個性把握テストはもはやトラウマのようになっていた。最下位が除籍、なんて圧力をかけてきたのだから、相澤が何か言おうとしたら身構えてしまうのも仕方ない。


「学級委員長を決めてもらう」


直後、学校っぽいの来たーーーっ!!!という安堵の叫びが響いた。それほどまでに普通の学校とはかけ離れたことを2日間にやらされた心労が、生徒たちに叫ばせたのだろう。涙なしには語れないところである。


同時に、椅子や机が動くガタガタという音とともにそれぞれが手を高く上げて主張し始めた。雄英での委員長職は、ヒーローとして他者をけん引する重要なスキルを磨く機会である。誰もが手を上げていた。


「委員長!やいたいですそれ俺!!」

「ウチもやりたいス」

「オイラのマニフェストは女子全員ひざ上30センチ!」

「ボクのためにあるヤツ☆」

「リーダー!やるやる!!」


各自好き勝手に主張するが、後半はどう考えても任せたくない。誰でもいいとは言えないな、と灯水は手を上げずに考えた。灯水は特にやりたいとは思っていない。そもそも灯水の個性はフォロー向きというか、他者を率いて思い切り活躍する、というようなものではない。


「静粛にしたまえ!!」


そこに、飯田の怒声が響いた。一気に皆静まり返る。飯田のメガネが心なしか光って見えた。


「”多”をけん引する責任重大な仕事だぞ!「やりたい者」がやれるものではないだろう!!周囲からの信頼あってこそ務まる聖務…!民主主義に則り真のリーダーを皆で決めるというのなら…これは投票で決めるべき事案!!!」


長々と語る飯田の言っていることは一理ある、一理あるがしかし、その手は高く空へ突き出されていた。


「そびえたってんじゃねーか!なぜ発案した!!?」


それを見て切島のツッコミが炸裂する。さらに蛙吹と切島が投票式の問題点を挙げた。


「日も浅いのに信頼もクソもないわ飯田ちゃん」

「そんなん皆自分に入れらぁ!」

「だからこそここで複数票を取った者こそが真にふさわしいリーダーということにならないか!?どうでしょうか先生!!」

「時間内に決めりゃなんでもいいよ…」


そうして相澤の許可のもと行われた投票では、なんと緑谷が一位になった。次点に八百万。といっても、緑谷が3票で八百万が2票という、民主主義でもなんでもない結果だが。
ちなみに灯水は焦凍に入れた。単純に、焦凍が委員長になったら面白そうと思っただけだ。その焦凍は1票だったため、焦凍自身は別の人間に入れたことになる。


(飯田君と麗日さんの名前がない…となると、仲が良さそうな緑谷君に入れたのか。じゃあ焦凍は八百万さんに入れたわけね)


確かに、真面目に投票するなら灯水も八百万がいいと思う。冷静に状況分析をする姿は頼もしかった。
緑谷もまぁ、真面目そうだからいいのではないのだろうか。本人はガチガチに震えていたが。


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