USJの試練−3
朝のHRが無事に終わると、現代文の授業が始まる。眠気と戦いながら、朝一で現代文を入れたカリキュラムを恨む。
何とか寝ないで授業を終えると、10分間の休み時間になる。次は英語のため、ノートや教科書を出していると、尾白がやって来た。
「灯水、次の英語当たるからさ、確認だけさせてくれないか?」
「お、いいよ」
すまなさそうにしながらノートを持ってきた尾白に、宿題になっていた部分のノートを快く見せる。すると、後ろの葉隠も身を乗り出してきた。制服だけなので、どこらへんに頭があるのか分からず動きにくい。
「あっ、私も見せてー!1個分からないとこあってさー」
「いいよー」
尾白が自身の回答と確認する横で、葉隠も自分のノートと照らし合わせる。
「あ、そういうことかぁ!にしても灯水君の字、すっごく綺麗だね!」
「え、そう?気にしたことなかったな」
「うん!めっちゃ頭良さそう!シャープな感じ!」
ふんわりとした感覚で伝えてくる葉隠に苦笑すると、尾白も「確かに、」とう同意する。
「できるヤツって感じの字だよな」
「そういう尾白君の字もあれだね、地味に頭いい男子の字って感じ」
「分かる!ちょっとごつごつしてるけど、地味に頭いい男子ってこういう字してる!」
「地味に…」
全体的に角ばっている筆圧濃いめの字をしている尾白は、クラスの上位10位くらいにいそうな運動部の男子っぽい字をしている。尾白は褒められているのか微妙な言葉に何とも言えない顔をしていた。
「葉隠さんはめっちゃ女子だね」
葉隠のノートを見てみると、丸っこい女子らしい字をしていた。アルファベットのまっすぐな線が若干カーブを描くタイプの筆跡だ。日本語訳のところも、ひらがなや漢字が丸みを帯びていた。
「ほんとだ、女子って感じ」
「そうかなぁ、自分じゃわかんないもんだね」
そうやって筆跡だけで盛り上がっていると、耳郎がおかしそうに混ざって来た。
「あんたら、すげーふわふわした会話すんね、なんかいいわ。隣のこいつらとは大違い」
「おいなんで唐突にdisってきた!?」
「こいつらって俺もか!?」
耳郎が指すのは、耳郎の隣の上鳴と、その後ろの切島だ。どうやら低俗な会話でもしていたらしい。普通の男子っぽい2人だ、イメージ通りではある。
「上鳴君と切島君めっちゃ字汚そう」
葉隠はそれに対し、くすくすと笑いながらはっきりと言った。思っても言わなかった灯水と尾白は思わず苦笑を漏らしてしまう。
「悪口だぞ葉隠!つか笑ってんじゃねー灯水と尾白!」
「俺は上鳴よりマシだっての!」
上鳴は憤慨するが、切島はそんな上鳴に同調するでもなく自らを守りにいく。上鳴は「はぁ!?」と切島を振り返った。
「大差ねーだろ!」
「いーや絶対俺のが綺麗だな!」
「耳郎さん、確かめてみてよ」
「OK、任せて」
そこで灯水は耳郎にジャッジを頼んだ。どちらも汚そうだが、本当に切島がマシなのか。
「どうだ!」
「俺のが綺麗だろ!」
「切島はね、汚いけどちゃんと書こうとしてんのが伝わるから、読めなくもない。でも上鳴は、ただただ汚い。なんか、普通に汚いわ」
「淡々と言ってんじゃねー!」
耳郎の冷静なジャッジは切島に軍配を上げた。対して上鳴は涙目でキレる。耳郎はクスクスと笑っているだけだ。戦闘訓練で一緒だったからか、馬が合うのか、2人は楽し気にいつも話している。
灯水も、尾白と葉隠とは何の気兼ねもなく話せるようになった。一緒に戦うということの絆は、やはり大事なものなんだな、と漠然と思った。