USJの試練−6


それから少しして、バスはドーム状の大きな建物の前に止まった。スタジアムのようなそれは、国内最大のスタジアムよりも一回り大きいだろう。これが学内の一施設に過ぎないのだ、相変わらずどうなっているのか分からない学校である。

相澤に引率されて中に入ると、すぐに目の前に広大な空間が広がった。陽光を取り入れる曇りガラスの天井の下、まるでテーマパークのような巨大な施設群。


「すっげーー!!USJかよーー!!!」


視界に入りきらない施設に、上鳴と切島のテンションの上がった声が響く。
地上部分の入り口から10メートルほど下に、地面を一段下げて施設は広がっていた。手前右側にはドーム型の建物、左側にはぐちゃぐちゃに崩壊した建築物郡。奥には池と巨大なウォータースライダーのようなものがある施設や大きな岩山、燃え盛る市街地がある。


「あらゆる事故や災害を想定し、僕が作った演習場です。その名も…」


巨大な施設に圧倒されるA組の前に、宇宙服のようなコスチュームを着た人物が現れる。


「U(嘘の)S(災害や)J(事故ルーム)!」


まさかの本当にUSJだった。そのツッコミよりも先に、有名ヒーローの登場にさらにA組のテンションが上がった。
宇宙服のような恰好の人物は、スペースヒーロー・13号だ。個性はブラックホールで、ありとあらゆるものを分子レベルで分解して吸い込むことができる。災害救助のエキスパートとして、災害大国日本で非常に有名で実績のあるヒーローだ。

今日は3人とのことだが、13号と相澤が小声で話していることを聞く限り、オールマイトは朝から事件を解決して遅刻らしい。なぜ遅刻に繋がるのかは分からなかった。だが13号がこちらに向き直ったため、思考を戻した。


「えー、始める前にお小言を一つ、二つ…三つ…四つ…」


遠慮することなく増えていく小言。だが紳士的なヒーローとして知られる13号の小言だ、口うるさいようなものではないだろう。

そして思った通り、その後語り始めた13号の小言というには大事な話は、ヒーローを目指す者としてしっかりと胸に刻んでおかなければならないものだった。
13号の個性は、一瞬で人をバラバラにして殺すことができてしまうものであり、一歩使い方を間違えれば凄惨な結果を招く。それは、大半のここにいる生徒たちに言えることだ。人を助けるだけの力を持つということは、悪意を持てばあっという間に大量殺戮が可能になるということでもある。

そうした超人社会を、個性の使用を資格制にすることで日本は秩序だったものにした。だがそれはうわべだけであり、少し個性を行き過ぎた使い方で使えば、秩序など一瞬で崩壊してしまう。
合法的に個性を公の場で使うことができるヒーローという資格は、それだけの責任をともなうのである。


「相澤さんの体力テストで、自身の力が秘めている可能性を知り、オールマイトの対人戦闘で、それを人に向ける危うさを実感したかと思います。この授業では心機一転!人命のためにどう”個性”を活用するか学んでいきましょう!君たちの力は人を傷つけるためにあるのではない。救けるためにあるのだと心得て帰ってくださいな」


何となくわかったつもりになっていたことを、明確に形にしてもらったようだった。
ヒーローといえば、救けを待つ人の前に立ってそれを遂行する者だ。災害救助など直接的に人命を救助することは、活動の一環だということも分かっていた。しかし、こうしてプロに言われると、公権力としての個性使用を認められた者として求められる姿勢がはっきりとする。
「守る」ことと「救う」こと、似て非なるものながら、どちらもヒーローの根幹なのだ。


「以上!ご清聴ありがとうございました!」


大仰な小言が終わり、パチパチと拍手に包まれる。相澤も珍しくニヒルなことは言わず、そのまま授業に入った。


いや、入ろうとした。


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