林間合宿と動揺−3


結局、A組が目的地、マタタビ荘に着いたのはすっかり太陽がオレンジに空を染め上げる夕方5時過ぎ。ぐったりとして待っていたワイプシの2人の前にやってくると、瀬呂が耐えかねたように「何が3時間ですか…」と膝に手をついた。


「悪いね、私たちならって意味」

「ねこねこねこ、でも正直もっとかかる思ってた。私の土魔獣が思ったより簡単に攻略されちゃった」


マンダレイは悪びれず、ピクシーボブは謎の笑い方でそんなことをのたまう。強引な猫の主張にちょっと引いてしまう若者である。
空腹のあまりグロッキー状態の灯水は焦凍の肩に手をついて無我の境地に至りそうになっていた。


「いいよ君ら…特にそこ5人。躊躇のなさは経験値によるものかしらん?」


どうやらある程度は彼女らも知っているのだろう、5人と言って指したのは敵との遭遇経験が他より多い緑谷、飯田、焦凍、灯水、爆豪だった。


「3年後が楽しみ!つばつけとこーー!!」


ピクシーボブはそう言うとぺっぺっと文字通り唾をつけてこようとしたので、近くにいた爆豪と焦凍、そして焦凍の後ろにいる灯水は後ずさる。相澤はそれを冷静に見ながらマンダレイに尋ねる。


「マンダレイ…あの人あんなでしたっけ」

「彼女焦ってるの、適齢期的なあれで」


そういえば緑谷はワイプシの4人がキャリア12年と言っていた。高校卒業と同時にプロとなったとすると、それだけで今は、そういうことだ。


「適齢期と言えば、」

「と言えばって!」


そんな地雷を踏みぬく緑谷は、ピクシーボブに肉球を模した手袋で顔を覆われながらも、マンダレイの側の少年を示す。


「ずっと気になってたんですが、その子はどなたかのお子さんですか?」

「ああ違う、この子は私の従甥だよ」


少年は小学生くらいだろう、2本の角のようなものがついたキャップをしている男の子だ。


「洸汰!ほら挨拶しな、1週間一緒に過ごすんだから」

「あ、えと僕、雄英高校ヒーロー科の緑谷、よろしくね」


緑谷は洸汰の前に出て屈みながら挨拶をする。それに対し洸汰は無言でパンチを繰り出した。腰の入ったそれはまっすぐ緑谷の股間を直撃する。「きゅう」と鳴いて倒れた緑谷を見て、思わず目を逸らす。なんてむごい。
飯田は慌てて緑谷に駆け寄った。


「緑谷君!おのれ従甥!なぜ緑谷君の陰嚢を!」

「ヒーローになりたいなんて連中とつるむ気はねぇよ」

「つるむ!?いくつだ君!」


洸汰は吐き捨てるように言うと、先に建物の中に入って行ってしまった。それを見て爆豪が鼻で笑う。


「マセガキ」

「お前に似てねぇか?」

「ああいう感じだったんだろうね、爆豪君」


焦凍と2人で言い合うと爆豪がぐるんと振り反って怒鳴る。


「ああ!?似てねぇよつーかてめぇら喋ってんじゃねぇぞメッシュ&舐めプ野郎!」

「悪い」

「フィッシュ&チップス…?」


全然悪いと思っていない焦凍と、もはや空腹のあまり幻聴が聞こえ始めた灯水に爆豪はさらにキレそうになるが、相澤が制止した。


「茶番はいい、バスから荷物下ろせ。部屋に荷物運んだら食堂にて夕食、その後入浴で就寝だ。本格的なスタートは明日からだ。さあ早くしろ」


指示があるとすぐに動き出すのは相澤の訓練のたまものだ。バスから各自荷物を下ろし、それぞれ部屋に向かう。男子も女子も大部屋だが、男子部屋の方が広い。


「おおー」


切島や上鳴はだだっ広い部屋に気の抜けた声を上げながら入って進んでいく。続く緑谷と飯田、灯水と焦凍もキョロキョロとした。


「皆で雑魚寝とか合宿って感じだ」

「なんでもいいから早くご飯食べたい」

「そうだな灯水君!しかし空腹でいきなりがっつくと腸に良くないからな!」

「え、カルビ?」

「飯田、こいつはもうダメだ、ついに似た発音の連想すらできなくなってる」

「と、轟君との双子を感じる…天然的な意味で…」


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