旧拍手お礼文
−クリスマス(蘭)



クリスマスは、その名の通り、キリスト教の祭だ。


ヨーロッパで数少ない、キリスト教でない国であるアルレシアだが、オランダのたっての要望により、毎年二人で過ごしている。


日本のように何でもありな国とは違い、特にアルレシアの国にとっては盛り上がるものではない。


だが、オランダはキリスト教の国で、"聖夜"であるこの日を大事な者と過ごしたいらしかった。

なにがあるわけでもない日だ、いつもアルレシアも応じて一緒に過ごす。


この習慣自体は、すでに数百年続く。


そして、今日、12月25日の夜。


オランダはアルレシアの家に来ていた。

ダイニングのテーブルにつき、アルレシアはディナーの準備だ。


「なぁ、毎年思うんだけどさ」

「なんや」

「俺がオランダの家行くんじゃなくていいのか?俺ん家はただの一日だけど」

「別にええ」

「…その理由は、いつも教えないよな」

「……、こっ恥ずかしいさけ、言えんわ」

目を泳がせあらぬ方を見るオランダ。


これも毎年の会話だ。

オランダはアルレシアに対しては基本、愛情表現が直球である。

なのに毎年恥ずかしいからと言わない。

「いい加減聞きてえんだけど。何百年恥ずかしがってんの」

「やかまし。寝とる間にチューリップティー飲ませるで」

「へー、何でもない日にケーキ作って出してやるのにそういうこと言うんだ。まぁ、オランダの特別な日は俺も特別だから出すわけだけど」

それを聞いて、オランダは真面目な顔をした。

「…ほんまか、ほれ」

「?あぁ。お前の大事のもんは俺も大事にする。大事なやつだからな」

オランダのことが好きだ。

好きなやつの大事なものは一緒に大事にしたい。

だから、大事な日をこうやって大事にしてるわけではない場所に来るのは、アルレシアにとっても解せなかった。


「ほうか…なんや、えらい嬉しいもんやな、」

滅多に笑わないオランダが、嬉しそうに、照れたように笑う。

本気で喜んでいるときの表情だ。

アルレシアも小さく笑い、冷蔵庫から持って来たケーキを切り分ける。

「わりと美味しそう」

「アルレの料理で美味しうないもんなんてない」

断言され、今度はこちらが照れる。

「…、いいから食べるぞ…」

ぼそぼそと言えば微笑ましそうに見られた。



***



食事を終え、二人はリビングのソファーに並んで腰掛けた。

オランダの方がアルレシアよりずっと大きいため、その分より沈み込み、自然とアルレシアはオランダにもたれる。

オランダは腕をアルレシアに回している。

部屋に明かりは灯っておらず、月明かりだけが光源である。



二人の間に会話はなく、ただ時間を過ごす。

感じるのはお互いの温もりと、心の温もりだけだ。


しばらくそうしていると、ふとオランダが口を開いた。


「アルレ、さっきの理由、聞きたいんか」

「なんで俺の家に来るのかって?」

「ほや」

「聞きたい」

「…感謝、したいんや。クリスマスは。アルレに会えて、一等大事なもんになったことに」

「えっ…」

アルレシアはもたれたまま目線を上げる。

オランダもこちらを見て、至近距離で目が合う。

「今日を大事なやつと過ごすんもほうやけど。アルレを産んだこの島で、アルレが生まれて俺と出会ってくれた運命に感謝したいんやざ」

真剣な色を宿す目。

アルレシアは泣きそうになるのを慌てて堪えた。

「そんなん俺だって…オランダと会わせてくれたもんには感謝してもしきれない」

顔を伏せて、オランダの肩口に押し付ける。

オランダはアルレシアを抱きしめて、頭に顎を乗せた。

「…ずっと、ずっと大事にしたる」

「…俺も」

よりオランダに強く抱き着く。

月明かりでごまかせないくらいに顔を赤くしながら、二人の影は重なったまま伸びていった。


115/163
prev next
back
表紙に戻る