小ねた集
−parasite genocide(ベラ)
●安定のベラ嬢
社会的寄生虫税
近年、中国とロシアとの交易において重要な役割を果たしつつあるベラルーシ。
欧州最後の独裁国家である。
口を開けば「兄さん結婚」、あのロシアが唯一本気で恐れる人物だ。
見た目は華麗で美しく、リトアニアも彼女に現を抜かすことがあった。
彼女の苛烈な中身をソ連時代に知ってもなおその姿勢を崩さない男前さには脱帽である。
見習う気はない。
アルレシアはそんなベラルーシとの経済連携について探りに訪れたのだが、珍しく首都ミンスクでは人々が抗議デモを行っていた。
独裁なのだ、あまりこういうことは起こらない。
「珍しいな…」
「フン、社会的寄生虫め!」
「うおっ!?いつからそこに…」
道を歩きながらそれを見ていると、突然背後からそんな声が聞こえてきた。
思わず後ずさると、ベラルーシが腕組みをして立っている。
「まったく、困ったものだ」
「…つか社会的寄生虫って…?」
「働かざるは食うべからず。西欧のやつらのように助けてやる義理はない」
2015年、ベラルーシでは社会的寄生虫税という税制が施行された。
年間180日以下しか働いていない者を社会的寄生虫とし、250ドルの課税をさせられるのである。
「でもあれ失業者だよな…?」
「正式な失業者登録をしている者は対象外だ。月10ドル分の社会奉仕が義務付けられるが、登録すれば助けてやる」
「あー、なるほどね…」
イギリスが言い始めたニートという者に近い。失業率が高いベラルーシには失業者が多くいるが、そうした者は対象外として一応の社会保障はあるらしい。
「何らかの形で180日以上働けば助けてやれるのに」
ベラルーシはそう呟く。
やはり国なのだ、大事でない国民などいない。
社会的寄生虫などと言うわりに、その背後には何としても就労させなければならないという気持ちもあるのだ。
ただ、それを言えば何されるか分かったものではないので黙っておく。
これが日本の言うギャップってやつか、とひとりごちながら、アルレシアは仕事の話をするためにベラルーシと会議場へ向かった。
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2017年3月
ベラルーシ社会的寄生虫税への抗議デモ広がる
ロイター