小ねた集
−monetary melancholy(伊、西)
●イタリア兄弟と親分は金融下手?
欧州の国で集まって経済のことを話す会議が開かれた。月一でやっているもので、意外とちゃんとまとまるときもあれば、いつものように踊ることになるときもある。
その会議の始まる前、少し早く会場に入ったアルレシアは豪華な廊下で突然後ろからタックルを受けた。
「うお、!?」
「アルレシア兄ちゃ〜ん」
「イタリアか…」
犯人はイタリアで、タックルついでによろめいたアルレシアの体を支える。アルレシアが大勢を立て直すと、イタリアはぎゅーっと後ろからアルレシアを抱きしめる。
「なんだよ」
「アルレシア兄ちゃん、俺のこと褒めて〜」
「あーえらいえらい」
「何のことか分かってないでしょ!」
「銀行のことだろ?」
「正解だった」
分かりやすいイタリアなのだ、昨今のことを考えれば何のことか容易に分かる。
一時期、イタリアの銀行は軒並みとんでもないことになり、欧州の金融を恐怖に陥れた。殺気立ったドイツの顔が忘れられない。
理由は簡単、イタリアらしく適当に投資したら失敗して大量の不良債権を抱えることになり、銀行どうしの融通が多いことから他の銀行にも波及していったのである。
欧州の場合、金融政策は欧州中央銀行が一括して決めるため、イタリアは独自の手段を取ることができなかったというのも問題を深刻化・長期化させる要因となった。
「すっごい額の不良債権消化したんだよ!いくつか地方銀行も再編したし!めっちゃ大変だったけど、来年までには何とかなりそう!」
「最初からECBとドイツの言う事聞いてりゃ良かったじゃん」
「EUさんがドイツの言う事ばっか聞くから俺だって嫌だったんだもん」
だもん、なんて言って頬を膨らませるのはイタリアくらいしか許されない。フランスがやったら殴っていた。
「あ、スペイン兄ちゃん!スペイン兄ちゃんもそう思うでしょ!?」
すると、通りかかったスペインにイタリアは突然同意を求めた。スペインは話は聞こえていたようだが、少しやつれた顔をしている。
「へ、俺?あー…うん、せやね、EUはあてにならへんもんなぁ…」
「スペイン兄ちゃん?」
首を傾げるイタリア。アルレシアはいろいろ察してため息とついた。
カタルーニャ地方の独立を巡る一連の問題は解決の兆しもなく、独立投票の日にはスペイン金融市場は資金流出を恐れる銀行が短期市場に殺到して一日150兆円分の取引があった。
今もスペインの金融市場は混乱が続いている。
さらにその後ろからロマーノもやってきた。スペインに呆れた顔をして足蹴にしている。
「あ、兄ちゃん!銀行の問題少しは手伝ってよー」
「あ?銀行はお前の問題じゃねぇか、南は銀行とか関係ねぇし」
ロマーノが面倒そうに言うと、イタリアは文句ありげだが一理あるので反論しなかった。金融は北の仕事だ。
項垂れるスペインをさらにロマーノがげしげしとしていると、ふとアルレシアは後ろから圧を感じた。この特有の圧力は、絶好調のEUの経済的リーダー様ではないだろうか。
「あーあ、ドイツがもっと頭柔らかければなぁ」
「せやなぁ、ドイツはもうちょい俺らのこと考えてくれてええと思うんや」
「あの芋野郎が柔らかくなるなんざビールで1週間くらいじゃがいも煮詰めても無理なんじゃね」
「それは悪かったな」
ラテン国家たちの悲鳴が響く。
――――
イタリア、銀行問題解決の兆し
スペインの金融混乱続く
(WSJほか)