小ねた集
−banned beer bike(蘭)



●オランダさんの変な乗り物



アルレシアは商談のためにオランダの家を訪れていた。
商談と言っても、従来からずっと続く品目なので確認というか、商談という名前にこじつけたただの茶会のようなものである。
そういう金にならない時間を過ごすのは、アルレシアにとってはオランダ相手であるときだけと言ってよかった。

家で待っていればいいのに、オランダはいつもアムステルダムの中央駅まで迎えに来る。


「よぉ、オランダ」

「元気しとったか」

「3日前に会っただろ」


3日前の会議以来である。オランダは変わらないな、と思って合流した2人は、そのままオランダの家に向かって歩き出す。

ふと、アルレシアは市内を走っている屋台のようなものに目を止めた。つい昨日くらいのニュースを思い出したのだ。


「なぁ、あのビアバイクってやつ、アムステルダムでは禁止になるんだよな」

「あぁ、ほや。町中は危ないさけのぉ」


10人ほどが向かい合うようにしてカウンタバーに座り、椅子のペダルを漕ぐことで進むビアバイク。バーと自転車がくっついてビールを飲みながらバーごと移動するというクレイジーな乗り物だ。
かじを取るメインドライバーは素面だが、他は飲酒しながらペダルを漕いでいる。ハイネケンの母国であるビール国家オランダらしい乗り物で、同じくビール大国ドイルでも普及している。
音楽を流しながらハイテンションでビールを飲んでひたすらペダルを漕いでいる様は、初めて見たとき何事かと思った。


「お前ん家マジで自転車好きだよな」

「アムステルダムは人口より自転車の数の方が多いで」

「マジか」


ちなみに人口の2倍の自転車がアムステルダムには存在している。

だがこのビアバイク、観光客や若者には大うけなのだが、やはり事故になることも少なくない。川に落下して死亡事故となってしまったこともあった。

そこで当局は、アムステルダム市内におけるビアバイクの使用を全面禁止にしたのだ。もともと交通渋滞を引き起こす大きな原因でもあったので、安全や公衆衛生、景観、交通の観点から禁止になるのはある意味当然だった。


「なくなんのは、それはそれで寂しい気もするけどな。オランダの頭おかしいところが一つ減るようで」

「今バカにしたやろアルレ」

「褒めたんだよ」

「ほうか。ならええ」


本当はバカにしたのだが、気にしていないのでいいだろう。
それに、アルレシアはオランダのそういう、まじめそうでとんでもないことを仕出かすところが嫌いではなかった。



――――
アムステルダムでビアバイク禁止へ
ロイターほか


144/163
prev next
back
表紙に戻る