フライト
−2
さて、とオランダは思案を始めた。
アルレシアが起きない範囲で、いったいどれだけできるか。
もう一度頬をつつくが、何の反応もない。
頭を撫で、そのまま手を頬に滑らせる。
頬にかかる髪の毛を耳の後ろにかける。
ここまで無反応だ。
かなり深く眠っているらしい。
昨日、あまり寝れなかったのだろうか。
ドイツがいること、場所がアメリカであることなど、心労が溜まっているんだろう。
少しでも心が休まればいい。
そう思いながら、アルレシアの指通りのいい髪をすく。
プラチナブロンドの少し長めの髪を、つむじに沿って整えていく。
昔からこうされるのが好きだったアルレシアは寝ていながらも気持ちいいのか、オランダの手に擦り寄る。
「…、殺す気か」
大西洋を渡るフライトは時間がかかる。
しかしアルレシアは一度も起きない。
それでも同じ姿勢はつらいのか、もぞもぞとし出した。
オランダはアルレシアのシートベルトを外し、腕だけでアルレシアを抱え上げる。
そして横抱きにして、自分の膝の間に下ろした。
オランダの胸に頭を預けたアルレシアの髪にキスを落とし、抱きしめる。
自分より高い体温が心地好い。
「お食事をお持ちいたしました」
そこへCAがカートに食事の容器を乗せてやって来た。
オランダの腕の中で眠るアルレシアに、困った顔をする。
「あー、こいつのはええ」
「かしこまりました」
オランダの分だけ用意し、CAは次の席へ向かう。
「寝て飯すっぽかすなんて子供か」
アルレシアを抱いたまま食事を始める。
もちろん食べづらいが、温もりを手放すことはできない。
寝る姿勢が落ち着いたのか、気持ち良さそうに眠る。
時折、胸元に顔を押し付けるように動いた。
アルレシアの一挙手一投足がすべて愛らしく見え、末期にあることを満更でもなく思った。