君が好きと言ったから
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ロンドン大火前
イギリス領になって少し、イギリスの家の雰囲気にも慣れてきたところで、ロンドンの街を散策しようとイギリスが提案してきた。
何やら一大決心をしたかのような大袈裟ぶりだったが、とってつけたように「港までの道知らないと不便だろ」と言ったので、それもそうだとアルレシアは誘いに乗ることにした。
「紳士らしく余裕もって誘えよ」
「う、うるせえな」
そっぽを向いたイギリスは気にせず、アルレシアは上着を羽織る。
「行くなら早く行こう」
「あ、あぁ…」
「手取ってくれんの?紳士さん?」
ふざけて言えば、イギリスはようやく調子を取り戻して乗って来る。
「お望みとあらば。この私が手を取って差し上げましょう」
「く…っ」
見慣れない紳士なイギリスに、アルレシアは耐え切れず笑いを漏らす。
「…珍しいな、そんな笑うなんて」
「それだけお前が珍妙なんだよ」
失礼な、と小突きながら言えば、イギリスは「なんだとこら」と言いながら反撃しようと手を上げる。
アルレシアはその手を掴んだ。
「エスコート、期待してんぞ?」
イギリスを見上げると、やはりそっぽを向いて頷いた。
***
中世の町並みが残るロンドン。
道路を修繕する財力はないのか、ところどころ土が剥き出しになり、雨でぬかるんでいる。
大きな通りには、両側の建物から張られたロープに旗やら何やらがぶら下がり、華やかだ。
行き交う人々も華やかだが、やはり今の覇権都市アムステルダムや昔のアントウェルペンほどではない。
イギリスとアルレシアは、そんな街を屋敷からテムズ川に向かって歩いていた。
靴が汚れないよう石畳を意識して歩くが、そもそも石畳の窪みに濁った雨水が貯まっており、あまり意味はなさそうだ。
「テムズ川に行くだけか?」
「あぁ、この後も仕事があるからな。テムズ川の港に最短で行く道を通ってるから、覚えろよ」
「了解」