デートしよう
−3
しばらくそうやって歩くと、周りの様子がだんだん暗く陰気になってきた。
(低所得世帯か)
明らかに建物がボロボロだ。
道端のシンナーの残骸に顔をしかめる。
「…ブルガリア、戻ろう」
「…やっぱそう思うか」
ブルガリアも不審そうだ。
二人は引き返そうと振り向く。
「お、綺麗な人発見」
するとそこには、男が数人立っていた。
(いつの間に、)
アルレシアたちが通り過ぎるのを待っていたのだろう。
舌打ちを心の中でつき、様子を観察する。
「青い目のお兄さん、高く売れそうだな」
にやにやと、だがどこか虚ろに男が言う。
キマッてやがる、アルレシアは目を細めた。
というか、前にもこんなことがあった気がした。
前と言っても500年前か。
そう自嘲しつつ、攻撃されてもいいよう身構える。
だが、突然目の前に広いと知ったばかりの背中が現れた。
「こいつ俺のなんだわ」
手には鉄パイプ。
不良か、とは言わないでおく。
「えー、そうなのー、まぁ言わなきゃバレないでしょ」
男たちの足音が前進するのが聞こえた。
「ブルガリア、」
「大丈夫。棒持った俺無敵だから」
そうは言っても、どんな武器を相手が持っているか分からない。
鉄パイプは武器ではないのだ。
「…俺もな、ただ守られるのは嫌なんだ」
アルレシアはベルトからスタンガンを取り出す。
「スイスからもらった」
「頼もし過ぎる」
二人は並んで立ち、男たちに向き直る。
「行くぞアルレシア」
「ん」
そして、男たちに突撃した。
ものの10分で、男たちは地に伏せる。
肩で息をしながら、二人は顔を見合わせた。
「棒つきブルガリア強いな」
「その言い方やめろ」
そう言って、ふ、と笑う。
「アルレシアのが強いけどな、スタンガンで殴ってたし」
「結構角が鋭利だったから」
思わずスタンガンで殴ってしまったアルレシアは、少し恥ずかしそうにする。
「スタンガンじゃなくても良かったんじゃね?」
「拳銃でも同じことやったかも」
ブルガリアは耐え切れなくなったのか、くすくす笑い出した。
アルレシアも釣られて笑う。
「あー、あほくさ。つか、デートでなんでこんなことになるかな」
「ほんとにな」
「ほんとにな、って、ブルガリアが行き当たりばったりにするからだろ」
「うっ…」
「…ま、今日はブルガリアの格好いいとこたくさん見れたからいいや。惚れ直したぞダーリン」
「……不意打ちやめて欲しいんだわ…」
照れだすブルガリアに、今日の一連の拒絶も照れだと分かる。
「分かった。ブルガリア、好き」
「〜〜〜!おい!」
「はは、」
今度は正面から抱き着く。
ブルガリアも抱きしめた。
「…ほんと、嬉しかった。昔に同じことがあったときは、その場で庇ってくれた人なんていなかったから。そのあとオランダが助けてくれたけど」
「あいつか…まぁ、いつでも俺が助けてやる。棒は用意しとけよ」
「とっておきの用意しとく」
鎖骨の辺りに擦り寄ってそう言えば、ブルガリアの抱きしめる力が強まった。
こいつが、好きで良かった、なんて、どちらともなく思っていたのだった。
「あ、でも次からは予定決めてからな」
「…分かった」