デレるとは
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その後ろ姿を見ながら、オランダはにやけそうになるのを手で押さえた。
アルレシアは明らかに拗ねている。
だが、それを年の功か、上手く隠していた。
そのため、ぱっと見ただ嫉妬しているようだが(EUに対してか、仕事にか、両方か)、その実構ってもらえず拗ねているだけだ。
だいたい、仕事をしていても関係なしに言いたいことを言うし、やりたいことをやるアルレシアだ、嫉妬ではない。
オランダを独占するものに嫉妬という感情を向けるのではなく、ベクトルをオランダ自身に向け構って欲しいと、構ってもらえず寂しいと思っているわけだ。
すでにデレを頂いている。
だがアルレシアのデレはここからだということを、500年あまりの付き合いの中で分かっていた。
「ほい」
アルレシアがオランダの机に置いたのはチューリップティー。
コーヒーと言って置きながらのこれだ、先制攻撃として非常に有効である。
アルレシアに耐性がない者はここで堕ちる。
何に、と聞くのは野暮だろう。
「飲みたくないんじゃなかったんか」
「オランダは好きなんだろ?だったら俺も好きになりたい。んで、その話してえな」
臆面もなく笑顔つきで言ってのける。
アルレシアに耐性があっても付き合いが短い者はここで堕ちる。
何に、とは言わずもがなだ。
「お前俺のこと大好きやな」
「え、今さら?つか分かってんなら構えよ、あんまEUのこと言ってるとノルウェーんとこ行くぞ」
アルレシアは後ろからオランダに抱き着き、背を屈めて肩に顔を埋める。
EUに入っておらずアルレシアと家が近いノルウェーは強敵だ。
やつも虎視眈々とアルレシアを狙っている。
「まぁ…お前以外とか考えらんねえけど。だからオランダも、いや、全部とは言わねえから、少しは俺のこと考えてくんね…」
全人類がここで堕ちるだろう。
オランダはアルレシアの腕を一旦外し、立ち上がって抱きしめた。
「心配せんでもアルレんことしか考えとらん。他の事は基本シナプスの無駄遣いやざ」
「ん、好き」
胸に顔をぐりぐりと押し付けるアルレシア。
オランダが堕ちたのは、もう500年も前になる。