hug me, hug you !
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イタリア兄弟に連れてこられたのは、なぜか枢軸トリオのところだった。
待ち構えていたドイツは険しくも呆れたように、日本は少し心配そうにしていた。


「突然どこに行くかと思えば…」

「隊長!アルレシア兄ちゃん救出作戦成功であります!」

「褒めさせてやってもいいぞこのやろー」

「確かに、イタリア君たちはファインプレーでしたね」


どうやら状況は把握していたようだ。
日本は年よりらしく褒め、ドイツは「まぁ、そうだな」と珍しく認める。


「それにしても、あいつらはくだらんことしかしないな…」


あいつらに入る国の数が多い上にほぼ欧州国家だったからか、ドイツは額を抑える。


「お前ほんと苦労性だよな。ハグしてやろっか?」


今回は同情したアルレシアが、冗談のつもりでそう言ってみた。すると、ドイツは手をどけてパッとこちらを見る。


「本当か」

「え…いや、いいけど、マジ?」

「アルレシアが良ければ。効果を実際に試してみたいというのもある」


その言葉はイギリスのようなツンデレではなく、おそらく本心だ。真面目なドイツらしい。経験と実践によってこそ結果の正統性を導く。


「あー、分かった。ほら」


仕方なく、アルレシアは腕を広げて促してやる。
ドイツはいざやるとなると若干顔を赤らめたが、それでもすぐに応じてアルレシアを腕の中に閉じ込めた。
硬く分厚い胸板に清潔な香り、背中に回るたくましい腕。


「……硬い。全体的に硬い」

「む、そうか。俺は…そうだな、確かに、癒される気がする」

「ドイツの胸マジで硬いよね〜」

「いつまでやってんだジャガイモ野郎!」


イタリアは分かる〜と笑い、ロマーノはドイツの足をげしげしと蹴る。
新たにストレスを感じることはないものの、硬くてごつごつしていて、アルレシアとしては癒しとまでは感じられなかった。
一方で、ドイツは満足したらしい。「ありがとう」と礼と言ってきた。


「次は日本もいってみようよ〜」


イタリアは離れたアルレシアを日本の方へ押す。


「えっ、私ですか?」

「すっごく癒されるよ〜」


イタリアは経験済みらしく、日本を勧める。アルレシアも断る理由はないので、付き合ってやろうと日本を抱きしめた。ここにきて、抱き締められる側からアルレシアが腕に日本を閉じ込めることになった。


「…日本が折れないか気が気じゃない」

「そんな簡単には折れませんが…でも、爺は衝撃に弱いので」


互いに、ドイツと同様ストレスは加わらないまでも軽減された感じはしなかった。アルレシアとしては、少し日本の体が不安になって若干のプラスだ。


「ヴぇー、そっか…」

「次はウチもええ?」


そこへ声をかけてきたのはベルギーだった。
美女の登場にイタリア兄弟のテンションが上がる。


「わっ、ベルギーさん!いいよいいよ!」

「なんでお前が答えんだよ」

「ちなみに僕もいますよ」


その後ろから顔を覗かせたのはルクセンブルクだ。
GDP的にもルックス的にも上位存在のルクセンブルクに、PIGSのイタリア兄弟はすごすごとドイツの方へ下がった。


「というかオランダはどうしたんだ?アルレシアがこんなことになっているのに」


そのドイツは、ベネルクスの2人が来たことで、普段ならもっと早くにアルレシアを抱きしめて囲って他に触れさせない北海セコムを発動するオランダがいないことに疑問を抱く。なんとなく、アルレシアも思っていたことだった。


「ずっと上司と電話しよるんよ。せやからウチらもお兄ちゃんがいないうちにアルレ兄ちゃんのハグリフレッシュやっとかな思て」

「なんだそれ…まぁ、いいけど」


やはりベネルクスとなると即決してしまうあたり、本当に甘いなと思う。


「やった!ほなウチから〜」


ベルギーはそれを聞いて嬉しそうにすると、アルレシアの胸に飛び込んでくる。抱き留めてやると、ふわりと女の子らしい甘い匂いがして、柔らかい感触が腕に収まる。


「はぁ〜、やっぱアルレ兄ちゃん好きや〜」

「どーも」

「はい、じゃあ次ええでルクセン!」


ベルギーはひとしきり楽しんでから、満足したのか体を離す。そして弟に譲る。こういう殊勝さが他の奴らにもあれば違うのに、と思わずにいられない。


「じゃあ失礼します。アルレ兄さん」

「ん、」


ルクセンブルクも、礼儀正しくしっかりとひとこと言ってからアルレシアを抱きしめた。7センチほどルクセンブルクの方が背が高い。そしてめちゃくちゃいい匂いがした。


「うわ、ルクセンめっちゃいい匂いする」

「えっ…」


すん、と思わず嗅いでしまうと、ルクセンブルクは体を固まらせる。
そして、ゆっくりと離れると、顔を赤くして早口で礼を言って去っていった。


「あれ、嫌だったか」

「アルレ兄ちゃん小悪魔すぎや…」


ベルギーが恐ろしそうに言うと、なぜか見ていた枢軸メンバーを含む全員が頷いた。
それが解せずに首を傾げると、そこへようやくオランダがやって来た。


「アルレ!いろんな奴らに厭らしいことされたてホンマか!?」

「いや、そこまではされてねぇけど…」


どこで誇張されたのか、慌てて駆けつけてくれたオランダに苦笑する。同時に、胸が暖かくなった。
大丈夫か、とアルレシアの肩を掴もうとしたのをすり抜けると、アルレシアはその逞しい体に飛びついた。驚きつつも受け止められ、硬い胸元にすり寄る。


「…やっぱ、オランダの腕ん中が一番落ち着く」

「アルレ…いつでも抱き締めたるさけ、疲れたら俺のとこだけに来ておくんね」


結局のところ、ハグするとストレスが減るはどというのは、誰でもいいわけではないのだろう。
何より、一番安心する人の側でなら、ハグという形ですらなくてもいいのだろう。

400年以上にわたって慣れてきたオランダの腕の中、世界で一番、そして歴史上一番安心する場所で、アルレシアはそう思った。


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