夢主のお悩み相談シリーズ
−喧嘩した/伊
●現在
相談者:イタリア
ヨーロッパにおいて、現存する国家としてはサンマリノに続いて2番目に古いアルレシア。
普通の人間と違い、国家の歴史がそのまま人生となる永き時を過ごす国たちだが、迷い悩むことは当然ある。
そんなとき、自分達より経験のある年上というのは限られてくるもので。
ヨーロッパでは、やはり文明を持ってから2000年以上を生きるアルレシアが、もっぱら相談相手になることが多かった。政治的に中立で在り続けたことや、そのスタンスが経済第一だったことも、政治的利害関係を気にせず話ができた要因だ。
そしてその相談役ポジションは、いまだに健在なのだった。
***
「ヴぇ〜、アルレシア兄ちゃ〜ん…」
「その情けない声はイタリアか?」
「ひ、ひどい…」
その日、イタリアはアルレシアの家を訪れた。情けない鳴き声にアルレシアはそれをそのまま伝えたが、イタリアはさして気にした様子もなく、アルレシアに飛び付いた。
若干イタリアより小さいアルレシアを包み込むように抱き締めたイタリアだったが、精神的には抱きついていると言った方が正しい。
「あー分かった分かった、ほら、上がれ」
「わーい、ありがとう!」
仕方ないな、という風に笑うアルレシアの優しさが、イタリアは大好きだった。
ただ、イタリアは普段ならドイツに何事も相談する。やはりずっと一緒だったからか、すぐ「ドイツ〜」と言ってしまうのだが、今日はそのドイツとのことで悩みがあるからアルレシアの元へ来たのだ。
アルレシアの屋敷のリビングに通され、イタリアは上質なソファに座る。さすがイタリアというべきか、アルマーニ・カーザのソファだと一目で分かり、自分の家のものを使ってくれていることに嬉しさを感じる。
「アルレシア兄ちゃん、アルマーニ・カーザのソファ使ってくれてるの?嬉しいなぁ〜」
「おー。まぁ、机はロイヤル・コペンハーゲンだけどな」
「そこは揃えてよ〜」
「統一しないのが俺の家だしな。で?家具を売りに来たわけじゃねぇだろ?イタリア」
アルレシアはフォートナム・アンド・メイソンのベルガモットブレンドの紅茶を出してやりながらさっそく切り出す。一緒に出した菓子はジャン・ポール・エヴァンの高級チョコレート。まるで日本のごとく何でもありな空間だ。
「あのね、あのね、ドイツとのことなんだけどね…実は、喧嘩しちゃったんだ」
「へぇ、珍しいな」
シュン、としたイタリアに、アルレシアは言葉通り珍しく感じる。ドイツと喧嘩したこともそうだし、それが尾を引いていることもそうだ。
「ドイツは悪くないんだ…俺、最近また銀行やらかしちゃったから…ただでさえドイツは今いろいろ大変なのに、またいつもみたいに助けて〜って言ったら、怒られちゃって。それで俺もカチンて来ちゃったから…」
身ぶり手振りが激しいイタリアだが、今日はそれにも覇気がない。
イタリアの第三位の大手銀行が、欧州中央銀行のマイナス金利政策によって不良債権を拡大させてしまい大問題となった。いつも通りドイツに助けを求めたら、投資家に負担させろ、公的救済はするなとこっぴどく怒られたそうだ。
もともとは欧州中央銀行の政策のせいだったこともありイタリアは反論したそうだ。
「そしたら、『いつもいつも俺に頼ってばかりで、迷惑だ!』って…だから俺も、SMスプラッター大魔王って言って逃げてきたんだ」
「あー…なるほどな」
最後のは聞かなかったことにした。
それにしても、やはりドイツはドイツで色々と限界が近いらしい。いつもはもっと優しくイタリアにも対応できていたが、イギリスの脱退もあり、余裕がなくなっていたのだろう。
まだできてから400年と経っていないドイツや、統一が進まず成熟が遅かったイタリアは、国たちの中でも精神的にはまだまだだ。
「イタリアはもう怒ってないんだろ?」
「うん…」
スペインもそうだが、やはり怒りを長引かせることができないたちだ。冷静になって、反省しているところはイタリアが愛されるゆえんだろう。
「まずはドイツが冷静にならないとな。あいつが冷静になれたら、自然と解決するさ」
「そうかなぁ?」
「そうそう。まずは飲んでけよ、ロゼくらいは開けてやる」
「わっ、ほんと!?」
「半額払えよ」
「で、ですよね〜…」