夢主のお悩み相談シリーズ
−喧嘩した/独
●現在
相談者:ドイツ
イタリアが相談に来た翌日、律儀にアポを取ってからやって来たのはドイツだった。
「突然すまない、アルレシア」
「来るだろうなって思ってたからいいよ。上がれ」
イタリアの話を聞いて、すぐにドイツも来るだろうことは分かっていた。イタリアが来ていたことを当然知らないドイツは、そんなアルレシアに不思議そうにしていた。
先日と同様にソファに座らせ、コーヒーを出す。実はいつも来客用に出しているものを切らしており、STARBUCKSのブレンドだったりする。
「アルレシア…その、単刀直入で済まないんだが、」
「悪い、STARBUCKSのじゃさすがに嫌だったか」
「え、いや、コーヒーは美味しい…というかSTARBUCKSなのか…」
「来客用の切らしててさ。まっ、コーヒーのことじゃねえなら安心して聞けるわ。言ってみ?」
促してやると、ドイツは「敵わないな、」と小さく笑い、話し始めた。
「最近、俺は自分が正しいのか分からなくてな。普段はこんな弱気、ビールで洗い流してしまうんだが…イタリアとも喧嘩してしまって、少し…その、」
「疲れちゃった?」
「っ!…アルレシアに取り繕っても、意味ないか」
身体的な疲れはもちろんあるだろうが、ここに来たドイツの表情は思い詰めていて、心が疲れてしまっているのだと容易に推測できた。
周りに頼ることをあまりしなくて、その上それが一人でできてしまうタイプのやつは、頼れないと諦めたときの心理的な疲れが普通の人間より大きい。ドイツは、人口の少ない北欧や考え方の異なるフランスに頼りきることができない中、一人でEUを引っ張ってきた。
勤勉な国と言えど、日本と違いしっかりと休みは取る国だ。身体的な疲労はそうでもないはずだが、2008年のリーマン・ショック以降、ギリシャ危機や難民問題など不安定な状況が続く中で精神的な疲労は相当なものだろう。
「…だが、それはイタリアに対して当たってしまうことの理由にはならない」
「じゃあ謝ればいいだけじゃん?」
「それはもちろんだ。しかし、根本的なところは解決していない…また同じことを仕出かさないとも限らない」
責任感が強いのも考えものだな、とアルレシアは思った。隊長気質なところは元からある上に、2度の大戦の惨禍を引き起こした責任感も戦後ずっとある。
アルレシアとの間でそれを解決したのですらつい最近のことだ。
「…じゃあ、俺にできることはしてやるよ」
「……?」
そう言うと、アルレシアはドイツの右隣に移動した。そして、思いきりその上体をこちらに引き倒して頭を膝に乗せてやる。いわゆる、膝枕である。
「なっ…!アルレシアっ、!?」
「いーからいーから。寝ちゃえよ」
アルレシアは困惑するその目もとを右手の掌で覆い、左手で一定のリズムで胸元をポンポンと動かす。
「…アルレシア、……いや、なんでもない」
「んー?言いたくないならそれでいいけど…ここはEUじゃないし、俺しかいないんだ、好きなこと言っていいんだよ」
ドイツは徐々に呼吸を深くしていきながら迷ったように沈黙し、そして、口を開いた。
「フランスのやつ…昔からずっと協調性がない。イギリスはそれに加えて脱退なんて面倒なことをしやがった。…スペインとポルトガルはやる気がない。もっと考えるべきだ…」
「あいつら500年前からずっとそうだけどな」
「イタリア兄弟は…悪いやつではないんだがな、やはりスペインたちと同じようなところがある。オーストリアは協力はしてくれるが力がないし、オランダは不利益だとまったく手を貸さない。ベルギーはいいやつだが、地方がまとまらなさすぎて困る。ルクセンブルクは優秀だが個人プレイが目立つな」
「そこら辺も変わんないかも。特にオランダ」
「北欧は人口規模が少ないから、やれることの上限が低い。…バルト、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリアも成績が悪い。…ギリシャは最近はよくやってるがあいつのせいだ…チェコとスロバキア、ポーランドは最近右傾化してるな…気掛かりだ…」
「東欧は問題児ばっかだよな」
「…俺が背負うには…27か国は多すぎるんだ…だが…泣き言は……言っていられない…」
だんだんとドイツの意識が微睡んできたらしい。声が小さく、くぐもり始める。なるべく声の抑揚を押さえて低く喋ってやれば、なおさら眠りが加速していった。
「…頑張ってるな、ドイツ。お疲れ様」
「……あり、がとう…アルレシア…」
イタリアとはきちんと仲直りできるだろう。その前に、少しでもドイツの疲れを軽減させたい。
そう思っての行動だったため、効果があると嬉しい。
何だかんだ、この年下の大国が、長い時間断絶していたとしても、ずっと大切だった。
「…おやすみ」