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ある日、いつも通り部活後に更衣室でむさ苦しくバレー部たちが着替えているときだった。
伊吹はまだマネージャーとして片付けの仕事が残っていたため、体育館の荷物を部室に引き上げている最中だ。そんな中、久しぶりに日曜がオフになるという話で盛り上がっているのが分かった。
伊吹はスクイズボトルを乾燥棚に片付けながら片耳にそれを聞いていた。
「岩ちゃ〜ん、日曜に予定は?」
「特にねえ」
「ないの?」
及川は岩泉に予定を確認して意外そうにしていた。ちらり、と一瞬こちらを見た気配がいくつか。
実は、伊吹は岩泉と付き合っている。最初は隠れていたのだが、夏の合宿で岩泉がついバラしてしまい、薄々感付いていた3年を中心に茶化されつつ全員の知るところとなっていた。
とはいえ、伊吹がそういうのを茶化されるとキレるのを身にしみて知っている彼らは、あまりその方面でからかうことはしなかった。少なくとも岩泉に対してだけで、今伊吹がいることもあって及川は何も言わなかった。
「じゃあさ、日曜のオフで餃子フェス行こうよ!」
「え、岩泉さん、次の休みのどっかでラーメン連れてってくれるって話じゃなかったでしたっけ」
すると、金田一が思い出したように言った。途端に及川が「え〜」と拗ねたようにする。金田一だけでなく、渡や国見もラーメンを食わせて貰うことになっていたようで岩泉に詰め寄る。
一方、松川と花巻も餃子フェスに関心があり、なんなら金田一たちも「でも餃子フェスも気になる……」と餃子フェスに心奪われていた。
「あー、そういや金田一たちにそんな話してたな。でも俺も餃子フェスがぶっちゃけ気になる」
「じゃあみんなで行く?」
及川は名案とばかりに手を打った。
それを横目に矢巾が近くに来て伊吹に耳打ちした。
「おい、いいのか?デート誘わなくて」
「……別に、あの勢いに水差すほどのもんじゃねえだろ」
「でもお前、悩んでたじゃん」
矢巾が心配そうなのは、伊吹が矢巾に相談をしていたからだ。
岩泉と付き合っている伊吹だが、今まで恋人らしいことはしたことがない。伊吹とて、岩泉とインスト映えしたいわけでもないため、それほど気にしているのでもないが、最近は少し気になりつつあった。
矢巾に相談していたこと、それは、ひょっとして岩泉はそれほど伊吹のことを好きではないのでは、という不安だった。
今のところ岩泉と伊吹は行為を致すことは毎週のようにあれど、デートの類はしたことがない。告白してきたのは岩泉で、同じ気持ちを返したのは伊吹だが、岩泉は伊吹と出掛けることはおろか2人きりで帰ることも特にしない。
誘われたいという受け身の精神は嫌いである伊吹だが、岩泉からそういう誘いを受けないのは、岩泉が伊吹と恋人らしいことをするつもりがないからではないかと思うようになっていた。岩泉はやりたいと思ったらやるし、言いたいことは言う男だ。
ヤれればいいのか、なんならセフレとして考えているのか、しかし岩泉に限ってそんなこと、とぐるぐる考えるうちに矢巾に様子がおかしいとバレて、洗いざらい聞き出され、今に至る。
矢巾は伊吹から動いてみるよう言ってくれはしたが、もしそれで断られたら立ち直れないと伊吹は動けないでいる。