あと40分−1
本誌(2019/7/29)までのネタバレ注意
捏造過多です
「お前、この点数やばくね?」
鴎台高校、男子バレーボール部の部室にて、″小さな巨人″と呼ばれることの増えてきた小さなエースが引いたような声を出した。
伊吹は着替えながら、ちらりとそちらを見る。
声の主である星海光来は、幼馴染みだという昼神幸郎とともに紙を眺めていた。170をぎりぎり切る星海からは、190センチの昼神の手元は遠いが、その力強い眼光は「ないわー」と如実に語っていた。
「さすがにこれは…やばいんじゃない?」
隣に立つ昼神もそう言って紙を突き返した。その紙は今日の小テストだったそうで、答案の持ち主である巨体は改めて点数を見て項垂れた。
白馬芽生、200センチを越える長身とがっしりとした体、名実共にこの部活におけるもう1人のエースだ。
基本的に鴎台は部活に特化しており、勉学面はあまり重視されていない。それにも関わらず成績が芳しくないのは、まさかのエース2人だ。それでも星海は要領がいいのか、なんとか赤点は回避していた。
「赤点取ったら合宿行けないよ?エース呼ばわりされて日頃ドヤ顔してるくせに赤点とかそんな恥晒して大丈夫?」
「言葉を!選んで欲しかった!」
「選び抜いたよね〜」
気の抜けた喋り方のくせに毒舌というか、鋭利な事実を淡々と述べる昼神に白馬はゴリゴリとメンタルを削られていた。
今は上級生が先に帰ったためまだいいが、こんなことがバレればエースと言えど怒られる。赤点で合宿に行けないともなればどんな目に遭うか。
「伊吹、なんとかしてやれよ」
「……俺が?」
ずっと黙っていたところへ、星海が話を吹っかけてきた。他の長身2人も見下ろしてくる。
「マネージャーだろ、サポートしてやれって」
「業務外だわ」
「えー、でも伊吹ってそこそこ教えるの上手いじゃん、恐いけど」
「それな」
以前、昼神と星海の期末対策をしてやったことがあったが、相当厳しくした覚えがある。普段昼休みなどもよく一緒にいるため、容赦なかった。
一方、白馬とは部活以外では関わりがない。クラスが異なる上に、白馬はクラスの友人と普段連んでいるからだ。部活でも部活のことしか話していない。
特に気まずいわけでもないし、部活ではよく話すのだが、そういう個人的な部分となると戸惑う気持ちはある。
とはいえ、学年首席である伊吹が勉強を教えるというのはごく自然な流れだ。
「悪い、ちょっと頼む。さすがに合宿行けなくなるのはまずい」
当の白馬は、気まずさを上手く隠して頼んできた。背に腹はかえられない、というほどでもなさそうだが、避けられれば避けていた展開だろう。
ただ、そこまでして頼むのなら、伊吹も無碍にするわけにはいかないと思う。何より、白馬が合宿に来れないのは致命的だ。
「……分かった」
「なんか奢る」
「別に、ちゃんと点取ってくれりゃいい」
少しだけ煩わしいような気もしたが、それも隠すようにロッカーを閉じた。