千年純愛−1


妖狐宮ツインズ×主
パロです



幼い頃から、たまに見る夢があった。

みずぼらしい貧相な小屋で、細々と畑仕事をしていると、必ず2匹の狐を見付ける。衰弱したその2匹を保護して、自分の食事もままならないのに食わせてやって、なんとか元気にさせるのだ。

伊吹は、夢の間はどうするでもなく、自分の行動を客観的に見ているだけだ。視点は一人称のため、鏡もない粗末な小屋では自分の姿は分からない。
服装からして大昔、としか判別できなかった。

狐たちは順調に回復していき、伊吹はずっと1人で暮らしている中で懐いてくるに2匹に心を寄せていく。どうやら、家族はいないらしい。

しかしある日、天候不順の中で雨乞いをすべく、伊吹を生け贄にしようという話が近くの村で起こった。反論することもできず、伊吹は大人たちに連れられ、酒を飲まされ、神社のような建物の境内で杭に括り付けられた。
現代と様式が異なる建築が実際に存在するのかは分からない。
この夢が、伊吹の記憶の集合体なら、ファンタジーか何かなのかもしれなかった。

そうして、伊吹はどんどん衰弱していく。そこへあの狐たちがやって来る。
困ったように、しきりに伊吹の周りをぐるぐるとする。


「逃げて」と言おうとしても、酒で喉が焼けたのか声が出ない。このままでは狼にやられてしまうだろう。結局、顔のそばに来た2匹に微笑みかけてから、目を閉じるのだ。


いつもそこで目が覚める。


目が覚めると決まって涙がこぼれていて、寝ていたはずなのに起きていたような、そんな疲れと寝不足感に苛まれる。

いったいこれは何の夢なのか。いつまでも分からないままだった。


***


夏至を過ぎたばかりのある日の夕暮れ、放課後の遅くまで残って勉強していた伊吹は、夕空を見て帰ろうとようやく思い至る。
高校2年になって何カ月か経ったが、代わり映えしない日々の中で部活もせず、勉強くらいしかしていない。

両親が事故死してから福祉施設で育てられた伊吹は、あまり施設に帰りたくなく、逃げるように勉強するうちにやたら成績が良くなっていた。
人からの哀れみの目が不快で、同情されるのが不愉快で、他人と関わるのが嫌いだった。

いつしか伊吹は不良だと認識されるようになり、目付きの悪さや口の悪さも相まって、誰も近寄らなくなった。教師は施設育ちだから、とでも言いたげに伊吹を″優しく″放置している。

誰とも関わらない日々の中で、将来の展望も抱けるでもなく、伊吹はただ生きているだけの生活に嫌気が差していた。

そんな中で最近変わったことと言えば、同じ学年に関西から双子の男子が転校してきたことだ。クラスは両方とも異なるが、コミュニケーション能力が高く、やたら顔が整っていることもあって、すぐに人気者となっていた。
背が高く、イケメンで、関西弁で愛嬌がある、そんな双子は不良然りとした伊吹にはまったく縁もゆかりもない人間だ。
関わり合いになることはないだろう。

またしばらく、辟易とするような日々が続くのだと思うとため息が漏れた。勉強道具を緩慢に仕舞うと、伊吹はスクールバックを肩にかけて教室を出る。



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