SS小話集−抱かれたいのは(青城)
青城2年マネ男主
総受け、溝口寄り
マネージャーとして片付けを終えて、体育館の確認をしてから部室に戻った伊吹は、扉を開けるなり「おっ」という期待に満ちた声を聞いて瞬時に面倒なことになると直感した。
3年生たちがニヤニヤとしているのだ、間違いない。
「伊吹〜、この中で抱かれるなら誰がいい?」
「はァ?」
及川が早速口を開いて何を言うかと思えばそんなことで、伊吹はくだらなさにため息をつきたくなった。しかし答えないという選択肢もまたないのだ。
せめて質問の背景くらい知ろうと、「いきなりなんすか」と聞けば、嬉々として話始めた。
なんでも、部室で着替えていたところ溝口がノックもせず入ってきて、いつも通り及川が「俺の体見に来たんでしょ!」とからかったところ、それにノった松川や花巻の会話から誰が一番抱かれたい男かという話になったそうだ。それで溝口もいるのかと納得する。
「やっぱり伊吹も岩ちゃん!?」
「え、なんでそうなるんすか」
「今のところ岩ちゃんがトップなんだよね」
どうやら他の部員による多数決は済んでいるらしい。それが民意でいいだろうと思うのだが、及川たちは伊吹の答えが聞きたいようだ。
仕方なく、伊吹は答えることにした。
「まず、岩泉さんと京谷はないっすね」
「は?なんでだよ」
すぐに食いついてきた岩泉は、及川にクソくだらねえと言いつつ負けるのは嫌らしい。
「普通に痛そう…」
「「あー…」」
松川と花巻が納得したような声を出し、京谷は舌打ちをした。
「及川さんもねぇっすね」
「なんで!?」
「なんか伝染されそう」
「ちょっと失礼すぎでしょ!!」
それに噴き出した松川と花巻に及川が怒るが、伊吹は「松川さんと花巻さんも無理です」と付け足した。
「おっと」
「えー、なんでだよー」
「花巻さんはゴムしなさそう、松川さんは縛ってきそう」
「「あー」」
伊吹の言葉に及川と岩泉の納得した声が重なった。一方の松川と花巻すらも「否めない」とのたまった。そこは否むべきだろう。
「2年と1年はどうなのさ」
及川はまだ続けるらしいため、伊吹は続けて同じ2年を見る。
「京谷はさっき言った通り、渡は大丈夫、矢巾は無理」
「おいなんでだよ」
「矢巾だから」
「俺だからってなに!?」
3年はそれを聞いて大きく噴き出して、1年もこっそり笑う。本当は矢巾なら大丈夫だと思っている伊吹だが、別にそれは矢巾も求めていないだろう。
そして伊吹は最後に1年に目を向けた。
「国見は、なんか抱く側なのにマグロになりそう。金田一はOK」
「ぶっ、国見ちゃん…!」
「性病持ちよりマシなんで…」
「持ってねぇから!」
結果的には、渡と金田一ということで落ち着いた。それが妥当だろう、と思うのだが、花巻は「渡と金田一がありな理由は?」と聞いてきた。騒いでいた及川たちもこちらを見る。
「や、渡は普通に優しいし気が遣えるヤツだし。金田一も、たとえいざ本番ってタイミングでやめようって言ってもちゃんとやめてくれるタイプじゃねっすか。獣フレンズな3年とは違うんで」
「おーい変換と言葉には気を付けろ犯すぞ〜」
聞かれたから答えたのに花巻は米神をひくつかせてそう言った。その横で金田一は照れながら国見に蹴られていた。
最後に、伊吹はひとつだけ付け足す。
「ま、一番は溝口さんっすけどね」
「大人の男枠ずる〜」
大して悔しくもなさそうに松川が言うと、及川が「まっつんもそっち枠だかんね?てか伊吹趣味悪いよ!なんで溝口君!?」と言って松川に殴られ溝口にバインダーではたかれる。
「…溝口さん普通に優しいし、なんか特別扱いされんのドキッとしません?」
大人相手に変なことを言うわけにもいかないため、伊吹は素直に理由を述べた。
すると、溝口は持っていたバインダーを及川に渡してから伊吹の方へと歩いてくる。
そして、扉の前にいた伊吹を一瞬だけその腕と扉で囲むようにして閉じ込めると、耳元に口を寄せた。
「特別扱いしてんのお前だけだから他のヤツには分かんねーぞ、それ。あと1年いい子で待ってろよ」
そう言うと、呆然とする伊吹の頭をポン、と撫でてニヤリと笑い、扉を開けて出ていった。
当然、及川たちの絶叫がそのあとを追いかけるようにして廊下に響いたのだった。