SS小話集−抱かれたいのは(伊達工)
伊達工3年マネ男主
総受け、二口寄り
伊吹以外の引退した3年が部活に来ていたときのことだった。
きっちりレギュラーの自主練まで見てくれた茂庭たちと一緒に帰る道すがら、おもむろに二口が「そーだ!」と思い出したように声を出した。
何かと全員の視線が向くと、二口は隣にいる伊吹を覗き込む。
「伊吹さんは、この中で抱かれるなら誰がいいッスか?」
「……は?」
いきなり何を言い出すんだこいつは、とドン引きして見返すと、二口はめげずに話を続ける。
「ほら、伊達工ってほぼ男子高じゃないですか。だから、クラスでぶっちゃけ誰なら抱けるかって話になって、それで伊吹さんはどうなのかなって」
「いやお前、抱かれるならって聞いてきたよな」
「え、だってこの中だったら伊吹さん、どう考えても抱かれる側ですよね」
「青根、やれ」
伊吹が号令をかければ、青根はすぐに二口の頭を鷲掴んだ。見た目に違わず握力の強い青根によって二口は悲鳴を上げた。
それを面白そうに見ていた鎌先は、おもむろに「まァ俺だよな!」とドヤ顔をした。いったい何を思ってそうなったのか。
「いや、お前は無理だわ。乱暴そうだし」
「はぁ!?」
素直に返すと鎌先はやんややんやと騒ぎ立てるがスルーした。
「じゃあ青根はどうッスか?」
そこへ、復活した二口が聞いてくる。ちらりと青根を見るが、完全に理解できていなかった。
「……優しくしようとはしてくれそうなんだけどな、やっぱ加減がな……や、でも慣れだしな、」
「露骨にフォローする伊吹さん」
二口はおかしそうにケラケラと笑う。青根はフェアリー枠のため伊吹も強く出られないのだ。
「俺は〜?」
見計らったように聞いてきたアダルト担当の笹谷には、「俺は変なプレイに付き合う趣味はねぇ」と返した。「なんもしねぇって」と笑ってはいるが、恐らくこの場の誰も信用していないだろう。
二口はこの話を広げたいようで、1年にも目を向けた。
「1年はどーです?」
「黄金川は、うん、優しくするって言いつつ結局優しくできねぇタイプだよな」
「そ、そんなこと!!……あるかも」
「作並は安パイに見えて実は1番ヤバそう」
「試してみます?」
「え、遠慮しとく……吹上は真の安パイ」
「それはそれで複雑ですけど…」
3人のことを述べれば、全員納得していた。作並が試すように見上げてきて、恐らくこいつが1番油断できないなと伊吹は改めて感じた。
「結果、この中なら吹上と、あと小原と女川なら大丈夫。抱かれてぇっていう積極的なのは、まぁ、茂庭かな」
「へっ、俺?」
茂庭が素っ頓狂な声を出すと、途端に「やっぱりな」という空気になった。なんだかんだこの部活をまとめ上げただけあり、茂庭はリーダーたる決断力や冷静さがある。
「結構前に、二口のこと怒ってんの見て、あーこいつなら抱かれてもいいなぁって思った覚えがある」
『引き際くらい弁えて生意気言えよ、二口』と静かに叱った茂庭を見たときのことだ。当の本人は覚えていなさそうだったが、二口は覚えておりバツが悪そうにする。
「ッていうか!俺は!?」
すると二口はハッとしたように叫んだ。今さら省かれていたことに気付いたらしい。伊吹は少し呆れつつ、二口から目を逸らした。
「……やだ」
「え、かわいい……じゃなくて!なんで!?」
「……これでお前に抱かれたら、マジで後戻りできねぇじゃん………」
声が小さくなった自覚はある。夕暮れのせいにするには苦しい顔の赤みが差しているのも分かっていた。
それを見て、二口もカァーっと顔を赤らめる。
「そ、うですか……」
「は〜いアオハルは二人きりになってからね〜」
そんな空気を切り裂いていくアダルト担当に、珍しく救われたと感じた二人だった。