不器用なふたり−1
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高1影山×高2主
この烏野高校バレー部において、バレー馬鹿を挙げろと言われれば、やはり日向と影山の名前が挙がるだろう。
二人揃って直情型で、自分の感情や考えをドストレートに口に出す。それでも日向は、コミュ力の高さから友人も多く、そうした関係性の中で培った常識というのが備わっているのだが、ひたすらバレーしかしていなかった影山にはそれもなく、日向ですら「それは言わねーだろ!」と言われるような有様だ。
そんな影山の常識外れのストレートさは、いつしか影山の伊吹への猛アタックに様相を変えていた。バレーの話ではなく、恋愛の話だ。
恐らく本人には、口説いているつもりはなかっただろう。そんな高度なコミュニケーションができるヤツではないし、それは正直、伊吹もそうだ。
単に影山は、好きだと思ったときに好きだと言い、可愛いと思ったときに可愛いと言い、傍にいたいと思ったときに傍にいたいと言っていただけだ。
いわば感情がダダ漏れになっているだけで、そんな底の抜けた鍋のような状態の影山に、最初こそ引いたり驚いたりしていた部員たちも、すぐに慣れて気にしなくなっていった。
一方、それをすべてぶつけられる伊吹は堪ったものではなく、何度か注意したものの、本人が無自覚であるため効果はなく、次第に影山の言葉に絆されるようになっていった。
最終的に陥落した伊吹の方が痺れを切らして、「俺とどうなりてぇんだよ」と脅迫したところ、初めてそこに考えが至ったらしい。
やっと恋人、という関係に落ち着くことを選んだ影山だったが、友人すらいない影山に恋人など難しく、そしてそれは悲しいかな、成績優秀系不良である伊吹も同じだった。
ここに、友達もろくにいないのに恋人になってしまった男二人のカップルという地獄絵図が爆誕したのである。
察しの良い部員たちは影山の様子で二人の関係が変わったことを理解しており、特に面倒見の良い菅原は、伊吹にどうするべきかアドバイスをくれていた。
そんな菅原のアドバイスのもと、伊吹は影山を家に招くことにした。目的は迫る中間試験の対策であるが、二人で過ごす、ということにトライしていくべきだというアドバイスを果たすためでもある。
そうして、仙台市太白区のアパート、シングルで母が働きに出ている放課後の時間に、伊吹は影山と二人で居間のちゃぶ台に教材を広げていた。
「お前マジで授業全部寝てたんだな」
「すんません…」
ノートを開いて開口一番、伊吹は恋人としての時間など頭からすっ飛び、とんでもない状態から2学期中間試験に持って行かなければならない状況のまずさに頭を抱えた。完全にマネージャーの立場になっている。
なんとしても補習を回避させ部活の時間を確保させる、それが伊吹のマネージャーとしての責務だ。
「1学期の期末で学んでなかったみてぇだな?あ?」
「朝練で日向に勝つために早起きしてたら…眠くて…」
不良よろしく凄む伊吹に、影山は戦々恐々としている。普段は日向も横で叱られているし、なんなら田中や西谷もそうだが、今日は一人で伊吹の圧力に面していた。
伊吹としてはこんなことを言うために呼んだわけではないということもあり、とりあえずここまでにしておく。本題は勉強であることは変わりないが、マネージャーや先輩としてではなく、なるべく対等な恋人として振る舞うことに慣れる必要があるのだ。これも練習といえる。
「はぁ…まぁいい。とりあえずやるぞ。高得点はいらねぇ、赤点じゃなきゃなんでもいい。まずはポイントを絞る」
そこからは、伊吹による学習指導の時間だ。恋人っぽく、と思っても、馬鹿すぎてそんなことを言っている場合ではなかった。そんなまどろっこしいことをしながら教えられるほど、伊吹のコミュニケーション能力も指導能力も高くない。いくら成績が良いといえど教えるのは得意ではなかった。でなければ、レシーブ練習で部員たちの腕を真っ赤に染め上げるようなことはしない。