刑部姫のコピー本−ハッピーエンドの話をしよう


サバフェス13周目
アーサー×主



すべての旅が、終わった。
グランドオーダーが終わって人理焼却は破却され、レムナントオーダーで生き残った魔神柱もすべて排除した。
特異点も潰し、カルデアに対する査問も経て、晴れて唯斗はアーサーとともにカルデアに残ってビースト捜索の任務を請け負った。その末にビーストVIも討伐し、すべての目的が達成された。

そうして、アーサーは唯斗をアヴァロンへと誘った。そのアヴァロンはあくまでアーサーの世界のものであり、この世界のものではない。つまり、唯斗は、この世界での人生を終えることを選択したのだ。
立香やマシュとの別れはつらいものだったが、二人とも、唯斗の幸せを祝福してくれた。唯斗も二人の幸福を願って、そして、アーサーと二人で、このアヴァロンに至った。


「まずは案内してくれんの?」

「いや、僕もここに着いて早々、ビーストVIを倒してこいと言われて追い出されてしまってね。ほとんどここに滞在していないんだ」

「えぐいことするな…」


カムランの戦いを経てから、二つの聖杯戦争を戦い、その末にこのアヴァロンへと至ったはずが、三度、ビーストを倒すようにマーリンに言われてしまい、ここに来た。
そのため、アーサーもあまり詳しくないらしい。

二人して適当にピンク色の花が咲き乱れる花畑を歩く。幻想的な光景の中で、アーサーは防具を消した状態で、唯斗の手を握って隣を歩いていた。
唯斗の右手を握るアーサーの左手には指輪が光り、唯斗の左手にもまた、同じ輝きが鎮座している。


「それにしても、ここまで長旅だったね。もちろん、君が世界を失って、僕が流浪の旅に出てから、それぞれの旅で、という意味だ」

「…そうだな」


長い旅だった。人理が焼却され、人類史による人類の否定に対して、生き残ったカルデア職員たった20名と、立香、マシュ、唯斗だけで、この旅は始まった。


「まさか、11歳のときに出会った騎士王と、またカルデアで再会するとは思わなかった。今思えば必然なんだけどな」

「縁があるという意味ではむしろ自然なことではあるね。でもそれ以上に、やはり僕らは運命だったんだ」


アーサーが言うと、ロマンチックな言葉もキザったらしくない。それに、本当に運命と言えるかもしれなかった。世界がそういう構造なのだということも、この旅で知った。

特異点Fを生き残って、エミヤと出会った。第一特異点でフランス百年戦争の修正を行い、その後、アーサーと再会してサンソンを召喚した。
アーサーとはその前にも出会っており、そのとき唯斗は父の儀式の生け贄として血を流しており、それを助けてくれたのだった。初めて唯斗のことを抱き締めて、生きて欲しいと願ってくれたのだ。

そんな相手との邂逅だったが、第二特異点ではすれ違いもあった。消極的な唯斗にアーサーが苦言を呈したこともあった。しかしそれは、ローマでの探索の中で次第に埋められていき、アーサーは唯斗の意図を理解する。


「僕が最初に旅した特異点でもあるローマは、僕たちにとって特別な場所だったね。お互いのことを、初めて理解し始めた場所だった」

「あぁ。俺が予備員として、立香の身代わりになるべきだって考えたのも、このときだった」


第二特異点後にはディルムッドを、第三特異点後にはギルガメッシュを、第四特異点後にはアーラシュとアキレウスを迎えた。
唯斗の人間としての成長が加速したのはこの頃だ。第三特異点で立香と衝突する中で付き合い方を確立させて、第四特異点では本来自分がいなくてもいい存在だったと気づいた。

それに焦るように奮闘した第五特異点、唯斗は失敗し立香は成功したような場面もあった。この帰還後、オジマンディアスと出会った。
そして第六特異点で、命を賭してガウェインと戦ったことで、初めて唯斗は死にたくないと思った。


「俺が一番苦しかった第六特異点のあとのゴタゴタで、アーサーに頼っていたら、もっと早く解決してただろうけど、俺も覚悟しきれなかったかもしれない。誰にも頼れない苦しさを通して自分と向き合ったから、俺は、別れがあろうとアーサーと一緒に戦うことを決意できた」

「そうは言っても、今でも僕はあのとき君のそばにいてあげたかったとも」


第六特異点のあと、一時的に心も体も衰弱していた唯斗をすくい上げてくれたのは、ガウェイン含むサーヴァントたちの優しさと、アーサーからの好意だった。初めてアーサーが気持ちを伝えてくれて、唯斗なりにアーサーと向き合うきっかけとなったのだ。

そして、最後の第七特異点では最も厳しい戦いを共に乗り越えた。その後、時間神殿の攻略において、唯斗と立香はロマニにすべてを託された。


「…俺は、歴史ってものに救われてつらい生活を乗り越えてきた。ロマニは歴史を、愛と希望の物語だと言った。なら、俺はきっと、最初から愛と希望を知ってたんだな」

「その通りだよ。そして君はそれを、僕に対して発露してくれた。共に生きていくと覚悟して。その果てに、僕らはここに辿り着いたんだよ」


アーサーに手を引かれ、丘を登り切る。その頂上からは、一面の花畑と草原、宙に浮かぶ光の柱や岩、その向こうに広がる広大な青空、それらすべてを見下ろす高い塔が一望できた。

カルデアに来るまで、生きているのか死んでいるのか分からないような人生を送ってきた。誰からも認められず、誰からも愛されず、誰からも必要とされなかった唯斗は、グランドオーダーで初めて、自身の中にあった愛と希望に気づくことができた。
それは他ならぬアーサーに向けられたものであり、アーサーと出会ってこうしてここにたどり着けたことこそが、これまでの人生の苦しいことすべてと釣り合うような、いや、それ以上であるような、幸せなものだった。


……―――それは一つのエンディング。グランドオーダー、レムナントオーダーを経てもなお続く凄惨な世界と世界の生存競争を知らない、存在し得ないハッピーエンドの話だった。



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