brise de printemps−1


シャルルマーニュ×夢主
今回はぐだ子カルデア設定


人類史の焼却。

本来、取り合わされることのない言葉が連なるその事象は、残念ながら現実そのものであり、カルデアという南極の一部を残して人類史は燃え尽きた。

魔術王なる存在によって引き起こされた世界災害を解決するのは、爆発事故を生き延びたスタッフ約20名と、カルデアが過去の実験で召喚に成功したダ・ヴィンチという英霊、代理所長の医療セクショントップ・ロマニ、そして生き残ったマスター藤丸立香とそのサーヴァントであるマシュ・キリエライト、雨宮唯斗という、たったそれだけのメンバーである。

藤丸は唯斗を除けば日本から来た唯一のマスター候補であり、単なる数合わせのようにして招かれた一般人枠の少女だ。
恐らく年齢は同じか一つ上くらいだろう。

特徴的なオレンジの髪と活発そうな顔立ち、その印象通りの明るい性格で、魔術師とは言えないただの一般人ではあるものの、その生来の性質によって周囲を巻き込んで、この事態の解決のため、特異点へのレイシフトに臨んでいる。

唯斗は、恐らく巻き込まれた者筆頭だろう。


「ねえねえ唯斗、今パリに行ったらルーヴル美術館も空いてるかな!?」

「先輩、この時代はまだルーヴル宮殿は美術館ではありません…」


15世紀フランスの草原を歩く藤丸とマシュ、唯斗、そして現地で出会ったサーヴァントのジャンヌ・ダルクは、現在ラ・シャリテに向けて街道を歩いていた。

藤丸が脈絡もなく尋ねた質問は、マシュが残念そうに答えた。

恐らく「もう一人の」ジャンヌによって引き起こされたのであろう百年戦争の改竄によって、この時代は狂い、特異点と化している。
中世末期という神秘の薄れた時代にあって、竜が飛び交いイングランドは撤退済み。シャルル7世も死亡し、オルレアンは壊滅。南部の諸都市も次々と破壊されている絶望的な状況だ。


「そうなんだ。唯斗はフランスで育ったんでしょ?ルーヴル行った?」

「…、その質問に答えることは必要か?」

「必要必要!私も人理修復が終わったら行きたいしさ!」


それは必要ではない、の部類に入るのだが、もう今更だ。唯斗はため息をついて、仕方なく答えることにした。


「…行ったよ。小学校の社会学習でな。マシュが言った通り、この時代のルーヴルはまだ美術館じゃないし、それどころか石造りの無骨な要塞だ。16世紀はじめ、フランソワ1世の時代にルネサンス様式への改築が行われ、美術品の収集が始まった。今の美術館では、15世紀までの建築のうち外壁の一部だけが残されてる」

「へぇ〜!」


分かっていなさそうに見えるが、頭は悪くないようで、一度教えると身につけている。魔術はダメだが、こればかりは魔術回路の性質にも左右されるため仕方ない。

こんな調子で、藤丸はあからさまに取っつきにくいタイプであろう唯斗に対してもぐいぐい来る。とはいえ、本当に唯斗が黙っていたいときはすべて察してくれている辺り、空気が読めない天然ではない様子だ。
そういうところは、すでに召喚されているランサーなどの英霊にも好まれているようだ。


もともと、唯斗は人理が滅びようとどうでもよかった。
母が唯斗を生むと同時に亡くなり、それをきっかけに心を病んだ魔術師の父は母を甦らせようと、召喚術の名家同士のサラブレッドであることを最大限に利用して研究に没頭。11歳のとき、唯斗は召喚術を応用した死者蘇生のための術式で触媒として生贄にされそうになったが、かろうじて一命をとりとめ、父は死亡した。

もちろん、このとき術式は魔力だけを吸って起動することはなく、召喚は失敗。何も成せないまま父は死亡し、さらにそれが周辺住民に露呈したことでメディアでも「オカルト趣味の家で無理心中か」というようにセンセーショナルな報道をされてしまった。

神秘の秘匿を第一とする魔術協会は激怒し、唯斗をロンドンの時計塔本部に呼び出して尋問、その後フランスに移った。
父が血を引く二つの名家のうち、フランスのグロスヴァレ家の分家に引き取られたのだ。

そこで差別を受けながら孤独な子供時代を過ごした唯斗にとって、この国は嫌な思い出しかない場所であり、滅んでも問題はない。
何より、人理焼却を破却しても、この世界に唯斗の居場所はない。もしも唯斗も英霊召喚をしようものなら、危険因子が英霊と契約実績があるという事実に時計塔は怒るだろうし、だからこそ唯斗はあの爆発事故の直前にアサインを外されて予備員に配置転換されていた。

きっと、時計塔はカルデアから唯斗を引き取り、秘密裏に殺処分でもするか、魔術刻印を切り取って適性のある家に移植する試みを行うだろう。

とはいえ、カルデアで何もせず惰眠をむさぼるわけにもいかない。
行くも地獄戻るも地獄、唯斗にとっては何もモチベーションもない任務の連続だ。

意気軒昂な藤丸には悪いが、唯斗は藤丸にもマシュにも冷淡な態度を貫いているし、スタッフたちとも会話せず、施設内で積極的に一人でいようとしている。
何せすべてがどうでもいい、無気力な人間もどきなのだから。



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