運命の風−1


現パロオメガバース
高2α森長可×高1Ω主


春は出会いと別れの季節とよく言うが、学校という環境では、別れのあとにすぐ出会いが来る。そしてその出会いの熱も、葉桜となって次の季節の予感を感じ始めた頃には冷めており、五月病というけだるいものに変わっていくのだろう。

そんな、地面に散った土に汚れた桜の花びらに春の終わりと初夏の始まりを感じ始めた矢先のことだった。

ここにきて、いまさら出会いが訪れてしまったのだ。


「……お前、番だな?番だよなァ!?」

「っ……人違いで「あぁ?!」なんでもないです…」


決して近づいてはいけないと新入生の間ですぐに噂の広まった恐ろしい先輩に、性的に迫られるという形で。


***


人類には、男女という第一性差の他に、α・β・Ωという第二性差があるということは、小学生のうちに学習することだ。

小学校5年生のときに第二性差検診が行われ、そこで診断結果が明らかになるが、期待や不安を全面に検査を受ける子供たちに反して、結果は基本的にβだ。なにせ、日本の人口の94%がβであり、αは4%、Ωに至っては2%しか存在しない。

それぞれの小学校に一人いるかどうかというもので、ときには6学年すべてβということもある。これには地域性もあって、地域ごとに子供がある小学校というものであることから、より人口動態を統計的に反映しやすい。

私立中学や、偏差値の高い高校・大学となるとαの割合が高まる傾向にあるが、αの優れた能力がなくとも今では十分、社会の上層にいくことができる。それでもやはり、政治家や企業経営者にはαが多いのが実情だ。

そして、Ωはどのような社会進出をしているのかははっきりしない。Ωは第二性差を秘匿するためだ。これは、歴史上多くのΩがαによって人権を無視した扱いを受けてきたためで、とりわけ21世紀に入ってからは10万人以上のΩが日本では自殺をしているという危機的な状況もあった。

かく言う唯斗も、第二性差検診でΩと診断された結果、それがきっかけで腫物扱いされることが多くなった。いじめになりかけたこともあったが、そうしたことには教師が極めて敏感で、あまり大ごとにはなっていない。
Ω特有の生理現象である発情期という時期は1か月に1度ほどのペースでやってくるが、これには性的なからかいを受けることもあり、中学時代はそれでかなり不快な思いをした。

そうして、小学校から離れた中学校に進学し、高校からはさらに離れた学校に進学した。わざわざ隣町まで電車で通っているのだ。

学校側はそうした唯斗の事情をよく理解しているし、友人たちも察していながらあえて尋ねることはほとんどなかった。高校では平和に過ごせる、唯斗はそう思っていた。


「おい唯斗、いつになったら番になるんだつかもう番だろうがてめぇ」

「脅されてもYESとは言わないからな」

「チッ……」


盛大な舌打ちとともに強面をさらに恐ろしいものに歪める男子生徒に、通りがかった生徒は肩を揺らして足早に去っていく。廊下の壁に追い詰められ、巨体で威圧をかけてくるが、もはやそれには慣れてしまっていた。


森長可、1つ上の2年生の先輩であり、同じ男子だ。しかしαであり、春の終わり、桜の木の下で不良たちをボコボコにして沈めている場面に出くわした。
そのとき、唯斗の体は雷に打たれたかのような衝撃が走った。αに出会ったのは初めてではない。しかし、長可は明らかに違ったのだ。
それは向こうも同じだったようで、「お前が番だな」と言って迫ってきた。

αが、支配フェロモンと言われる従属誘引物質を液体で歯茎から分泌し、その状態でΩのうなじにある性従属腺を噛んで支配フェロモンを流し込むことで、第二性差性関係、俗に「番」と呼ばれる原始的なパートナーシップが成立する。
法的なものでは本来なかったが、Ωが拒否した場合を除き、番となると婚姻関係を結ばなければならない。それは、番という関係がΩから解消できるものではないため、αに対して法的責任を負わせる必要があるからだ。αは、番関係にあるΩと婚姻関係を解消するとき、いかなる理由であっても和解金を支払わなければならず、刑事罰に切り替えることも非常に簡単だった。



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