奇跡か否か−6


「それにしても唯斗、ちょっとでもいいから一緒にいて、なんて、可愛いけどダメだろ」

「え、ダメって…?」

「もっと欲しがれってこと。だから、ちゃんと俺に我儘言えるように、訓練しような」


すると、シャルルはそう言ってソファーの上で体勢を入れ替えると、唯斗を下にした。
突然ひっくり返されて、シャルル越しに天井が見えるような、押し倒される姿勢になる。


「な、」

「もう遠慮いらなくなったんだし」


まさかもうなのか。唯斗は驚いて固まってしまうが、シャルルは苦笑して優しく唯斗の頭を撫でる。


「っつっても、いろいろ準備必要だから、今日は最後まではしねーよ、そんな緊張すんな」

「最後…わ、分かった」


なんとか頷くと、シャルルは小さく笑って、そしてそっと唯斗に唇を寄せた。近づく精悍な顔に、唯斗は慌てて目を閉じる。
受け止めたシャルルの柔らかい唇は生ぬるい温度で、人肌と同じそれの柔らかさを感じていると、急に唇を割って舌が入ってきた。


「ッ、ん、」


つい驚いて声を出してしまうが、続けてシャルルがその舌で上顎をなぞると、ぞわぞわとしたものが背筋を駆け抜け、今度は濡れたような声が出てしまった。
気恥ずかしさがこみ上げるが、シャルルはそれでいいとばかりに咥内で大きく舌を動かして、唯斗の舌を絡めとる。

相次ぐ感覚に息がつらくなってきたところで、シャルルはようやく口を離した。


「かーわい」

「…うっせ……」


恥ずかしくて目を逸らすと、次にシャルルは、唯斗のシャツの下に手を差し込んできた。
素肌をシャルルのかさついた指が撫でて、触られている感覚とその明らかに欲を帯びた手つきに、びくりと震えてシャルルを見上げる。


「ここ、感じる?」

「ぅ、あ、なん、で、そんなとこ、」


シャルルはその指で、胸の中心の尖りを摘まんできた。男のそんなところを触って何になるのだと思う反面、下腹部に熱が溜まるような感覚がして、縋るようにシャルルの太い腕を掴む。
それに気を良くして、シャルルは胸元を触りながら体を低くし、唯斗の耳元に顔を寄せる。


「敏感なんだ?いいね」

「ひッ、んん、」


低く艶のである声で囁かれ、直後に舌が耳にねじ込まれる。鼓膜にダイレクトに響く水音と神経の集中する耳梁への刺激に体がびくりと震えた。

さらに、シャルルは体をずらすと、唯斗のシャツをたくし上げて胸元に顔を寄せた。そして、先ほどからずっと摘まんでいた先を口に含む。
暖かく濡れた感触が、すっかり敏感になったそこを舐め上げて、背筋がぞくりと震える。のけぞってしまったため、胸元を押し付けるようになってしまい、シャルルは胸の先を甘噛みした。


「ッあ、ちょ、んっ、」


浮いた腰を抱き寄せるようにして、シャルルは背中に左腕を差し込み、唯斗の背を弓なりにしならせる。

そのまま胸を舐めたり噛んだりしながら、右手で唯斗のジーンズの前をくつろげると、下着の中に右手を侵入させる。
すでに屹立するものを掴まれて、初めて他人に触られる感覚に震えた。

つい先ほどまで友人だった、恋人になったばかりの男にそんなところを触られているのだという事実は背徳感のようなものを感じさせ、唯斗は自分もシャルルの前に手を伸ばす。


「は、んっ、俺も、」

「…ん、じゃあ一緒にしよ」


シャルルのベルトを緩めてカーゴパンツをくつろげると、下着から飛び出しそうになっている屹立を布越しに少し触り、意を決して中から取り出した。
他人のものとはこんなにも熱いのか、と驚きつつ、それを上下に擦ることで、シャルルの表情が快感に歪むのが至近距離に見える。

ふと、そのままキスがしたい、と思ったが、さすがにそこまで言いだせず、視線を口元から逸らす。だが、そういう唯斗の機微に気付けてしまうのがこの男だ。


「唯斗、ちゃんと言わなきゃダメだろ」

「っ、ぅあッ、ちょ、待っ、」


おもむろにシャルルは再び唯斗の胸に口を寄せて吸いつき、さらに唯斗のものの先端を指でぐりぐりとして刺激を与える。達しそうになり慌てて左手でシャルルの肩を掴むと、シャルルは手を止めて再び体を起こす。


「俺にして欲しいこと全部言わなきゃダメだからな。ほら、どうして欲しい?何がしたい?」

「…っ、ぁ、おれ、」

「うん、なに?」

「…もっかい、キス、したい」

「他には?」

「……一緒に、イきた、あッ、ん、!」


すべて言い終わる前に、シャルルに口を塞がれる。性急な舌の動きが唯斗の咥内で暴れまわり、いつの間にかシャルルと唯斗二人のものがひとまとめにされて、シャルルの大きな手の平に包まれていた。

一緒に扱かれ、裏同士が擦り合い、先端のぬめりが妙に生々しく顔が火照る。
そのままキスを深くするシャルルは、背中に差し込んでいた手を抜いて唯斗の後頭部を鷲掴みにするようにかき抱く。


「ッ、やば、も、イく…っ!」

「ふ、俺も、…ッ!」


ほぼ同時に、互いに口を離してその瞬間を迎えた。頭が白くなるような衝撃とともに、二人分の精が放たれる。
それはすべてシャルルが手の平で受け止めたため、唯斗の腹に飛び散ることはなかった。

互いに荒い息で見つめ合ったが、シャルルは手から垂れる白濁に慌てて「やべ、ティッシュどこ?!」と騒ぎ出す。
気だるい中で体を起こした唯斗は、シャルルの手を近くにあったウェットティッシュを何枚も出して押し付ける。
ソファーの上で二人、上体を起こしており、シャルルが手を拭き終わったのを確認して、唯斗はその肩に額をつけて凭れた。


「……つかれた」

「可愛かったな〜唯斗」


シャルルはそう軽く笑うと、そのまま後ろに倒れ、先ほどとは逆向きになる形で、再びシャルルの体の上にのしかかるように倒れた。
今度は鼻を打つようなことはなく、唯斗はシャルルの胸板に頭を乗せて掛布団よろしく被さった。

そっとそこからシャルルを見上げると、二人のものを触っていた方とは反対の左手で唯斗の頭を撫でる。
その手は頭から頬に降りていき、擽るように唯斗の耳元を撫でた。


「これでお前はもう俺のモンだからな、唯斗」


そして、ぞっとするほど甘い声でそうシャルルは呟いた。きっと唯斗の運命は、10年前からすでに決まっていたのだろう、そう思わせるような、重くどろりとした響きを含んでいた。

同時に、その事実にすらドキリとしつつ安心してしまう自分に、我ながら収まるべきところに収まったものだと内心で独り言ちたのだった。



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