残滓と余波−18
「んッ、んぅっ、ぅッ、!」
鼻から抜けるような声が漏れてもなお、アーサーは唯斗の咥内を舌でかき乱すのをやめない。ぬるつく舌同士が絡み合う心地よさと、猛りが唯斗の中を穿つ快感とが合わさって下半身に蓄積されていく。
ようやくアーサーは口を離すと、腰を打ち付ける動きを早く、強くし始める。
「あッ、んぁっ、っ、!」
「はッ、フーッ、唯斗っ、」
アーサーの吐息も荒くなり、二人とも熱が最高潮に至りつつある。ギシ、というベッドの軋む音もアーサーの動きに合わせてどんどん早くなっていき、アーサーは唯斗の両手をシーツに縫い止めるように握った。
「唯斗ッ、一緒に、イけるね?」
「ん、っ、ぅあっ、アー、サー…っ、」
「く……ッ!」
「〜〜〜〜ッ!」
そして、アーサーの熱い白濁が唯斗の中に注がれ、唯斗も腹の上に吐精する。
しばらくお互いの荒い息づかいだけが響き、一気に脱力する。一方で、アーサーの魔力が全身に行き渡る温かい感覚によって、唯斗はしばらく熱が引かず、恍惚とした状態になった。
「…アーサー……」
「ん、」
短くアーサーは応じて、いったん自身を抜いてから隣に横になると、唯斗を抱き締める。アーサーの腕の中に包まれ、胸板に顔を埋めると、内側からも外側からもアーサーを感じられた。その感覚が、途方もなく安心できて好きだった。
「…アーサー、おれ、けんかできて良かったよ」
「そうなのかい?」
ぽつりと言った唯斗に、アーサーは意外そうにする。そういうアグレッシブなコミュニケーションを不得手としているであろうという前提によるのだろうし、事実、唯斗は基本的に喧嘩などできない。立香との意見の衝突はまた少し別だ。
「たとえ喧嘩しても、壊れないものが俺たちの間にはあるって、理解してたから。だから、俺も強く言えた。アーサーに強く言われても、そんな気にならなかった。ちょっと前なら、怖くてそんなんできなかったし、きっとめちゃくちゃ傷ついてた」
「…そうだね、傷つけた側の僕が言うのはどうかと思うけど…決して壊れない絆があると実感しているからこそ、喧嘩というのはできるんだろう。対等で、決して揺るがない関係。生前の僕にはきっとなかったものだ。サーヴァントになってからも」
アーサーはよく、唯斗と対等だと言ってくれる。これも一昔前なら肯定できなかっただろう。それくらい、アーサーは大人で、自分は未熟だった。
けれど、一緒に戦い、時に唯斗がアーサーを守ったり助けたりするような場面もあった中で、アーサーは唯斗と対等だと言ってくれるようになった。何を以て対等と言うか、というのはあるけれど、少なくとも恋人として、二人は対等だ。
「恋人なんて、僕にはいなかったからね。当然だ、僕はただの王でしかなかったし、サーヴァントになってからもその本質は変わらなかった。この旅で君と過ごしたから、こんなしょうもないことで動揺して、喧嘩して、それでも君と繋がっている」
「…俺も、オリュンポスでもっと吹っ切れたかも。あんだけ何度も死を覚悟したこともなかったから。変に一皮剥けたというか……まぁ、喧嘩して良かったとは思うけど、1回でいいかな」
「僕もだよ」
「うん。少しでも、アーサーと一緒にいたいし、少しでも、笑っていたい」
アーサーは唯斗をさらに強く抱き締める。お互い服を纏っておらず素肌が触れ合っているため、熱と微量な魔力が交換されていた。
二人にとって初めてのコミュニケーションとなった今回の一件で、図らずも二人は絆を確かめ合うことが出来た。それは喜ばしいけれど、唯斗もアーサーも、一秒でも幸せな時間を共にしたいと改めて思うようになった以上、きっともう、喧嘩することはないだろう。