ハンドクラッシャー
●必殺技訓練中
「新たな双子のかたち」の後
焦凍と想いを伝え合った翌日のことだった。
なんとなく気恥ずかしいような、それでも幸せなような、そんな一日の始まりだったが、訓練が始まれば一気に切り替わる。
灯水は発目からアドバイスを受けた霧氷を技にするための試行錯誤を開始した。合わせて空気中の水蒸気の温度を下げて辺り一帯の気温を下げる下準備も練習し、より高度な水蒸気のコントロールを行っていく。
やがて、サポート科の新しいコスチューム案を提案してもらう時間になったため、エクトプラズムと相澤に断りを入れてサポート科に向かった。
そこでベストの試作品を受け取って、いろいろと話をしていると、焦凍もやって来た。焦凍も同様の要件だったらしく、TDLへの帰りが一緒になった。
本校舎の廊下を歩きながら、互いのコスチュームの変更について話したあと、必殺技についても話が広がる。
「灯水はどうだ?順調か?」
「うん、まぁ、いろいろ考えてはいるんだけど、細かくてかつ大規模な制御がなかなか難しくて」
「あんだけ細かく制御できる時点ですげぇよ、俺は氷結にしてもあんなに細かくはできねぇ」
「今は同時使用の訓練中?」
「あぁ」
互いにアドバイスをしたり、「合わせ技もいいよね」なんて話をしていると、すぐに体育館γに到着する。
そして、相澤に戻った旨を伝えたときだった。
「あぶねぇ!」
「えっ、」
突然、峰田の高い声が降って来た。何かと見上げると、峰田のモギモギがこちらに向かってくる。触れれば最後だ。咄嗟に避けようとしたのだが、運悪く焦凍と避ける方向が重なってぶつかってしまった。なぜこういうところで双子を発揮するのかと呪ってしまいそうになる。
「いて、」
「うお、」
2人はよろけ、転びそうになった灯水を焦凍が支えてくれる。しかし、そこへ峰田のモギモギが飛び混んできた。
ぺた、と間抜けな音。ぐい、と肌が引っ張られる感覚。
2人が揃って見下ろすと、灯水の左手首と、焦凍の右手首が、モギモギによってくっついてしまっていた。もちろん外そうとすれば、2人の手首の外側の皮膚が引っ張られる。
「…え、マジか」
ぽつりと灯水の声が落ちると、やって来た相澤が現状を見てすぐに理解し、深いため息をつく。
「…何やってんだ双子おい」
「す、すみません…!」
これでは動けない。そこへ元凶の峰田がやって来た。峰田のよく響く声は皆にも聞こえていたようで、セメントの岩山のあちこちから様子をうかがるA組のメンバーが見えた。
「大丈夫かお前らってブフォッ!!」
峰田は2人を見るなり噴き出した。お前のせいだろ、と灯水が怒りに震えそうになると、TDLのあちこちから噴き出す音が聞こえた。
「なんだあれ」「ウケる」「マジか」という声に顔を上げられない。
「おい峰田、これはどれくらい持つんだ」
「あ、えと、半日もないっす!」
相澤が尋ねると、さすがに峰田は真面目に答えた。どうやらかなりもいでいたようなので、半日もせずに吸着力は失われるようだ。
だが不便なのは確かだ。しかも、ふとした拍子に動くと痛い。
「わりと危険だな」
「そうだね、結構痛い…」
焦凍も感じていたようで、顔をしかめている。相澤は2人の言っていることに気づくと、ミッドナイトを呼んだ。
「ミッドナイトさん」
「なに?」
「手錠でこいつら繋いでくれ」
相澤に呼ばれ、奥の方で指導していたミッドナイトが顔を出す。途端に、2人の状況と相澤の意味するところをすべて一瞬で理解した。
「やだ、何それいいじゃない!好みドストライク!手錠だけでいいの?」
逆に他に何があるんだという話だが、聞いてはいけないと、聞いたらR指定ページになるぞとガイアが囁いた。
結局、2人はミッドナイトがいつも手首につけている手錠を借りて、それで腕を繋いだ。少しきつめに手錠の輪と輪の間を調整すれば、モギモギが肌を引っ張るより先に手錠が2人の腕が離れるのを防いでくれる。これで痛むことはない。