お騒がせ会見 デート編−1
爆豪の二股会見がカオス化し、なぜか応利が一方的に巻き込まれて公然と迫られるようになって早数か月。さすがに往時ほどの騒ぎにはなっていないものの、いまだにあの会見はマスコミで取り上げられては現状報告をしているようだった。今のところ、誰にも落ちていないしその予定もない。
ちょくちょく慰めてくれる切島ならいいかもなんて呟いた日には鬼のように3人からメッセージが来た。すべて未読のまま削除した。
そんな状態が続く中、なぜか応利は今、緑谷とともに水族館に来ている。
***
東京都心、東京湾に面した街にある都市型の水族館は、いつも人で賑わう人気のデートスポットだ。そんなところにわざわざ来たのは、緑谷がすべて奢ってくれるのと、たまたまクラゲ展をやっているからだ。それ以上でも以下でもない。
「応利君と来れて嬉しいなぁ」
「俺は誰でもいいけどな」
キャップ帽を被ってマスクをする緑谷と、ハットを被りマスクをする応利。一応変装だが、意外とバレないものである。
緑谷は雄英在学中こそ変なシャツを着ていたが、さすがに大人になってからは普通のシャツを着るようになり、今もデニムジャケット、チノパンと、まあ普通の格好をしている。ただ、筋肉が隠せないあたり普通の人間にも見えないのだが。
「応利君、よくクラゲの写真トゥウィッターに上げてるよね」
「クソナードだ」
「かっちゃんみたいに言わないでよ…」
動物全般は概して好きな応利だが、海の生き物ではクラゲが好きだ。優雅な泳ぎ型と神秘的な姿、そして可愛げのある種類など、見ていて飽きない。
クラゲを多く集めた特別展があるというので、あからさまに自分のケツを狙う男とでも一緒に行こうという気になったのだ。
「じゃあ行こうか!」
「ん、」
緑谷に促され、それなりの人で賑わう館内に入る。薄暗い室内は、あちこちにライトで照らされた水槽が並び、円柱状のものもあれば壁一面に広がるものもあった。
最初は常設の水槽ばかりで、雰囲気としては良いのだが、いかんせん少しカップルを狙いすぎなところもあって、男2人でいるには少し気恥ずかしいような気もする。
だが、特別展のブースにやってくるとそんなことも忘れる。
「うわ…」
「おお、すごいね!」
左右の壁に埋められた大小様々な水槽には、多くのクラゲが種類ごとに浮かんでいた。白くやわらかな体が水の中で揺らめく様は見事だ。
そして正面には、巨大な水槽に無数のクラゲが泳いでいた。その数はまさに圧巻だ。
「緑谷、緑谷、あれ見ろよ、ほら、光ってる!」
くい、と緑谷の服の袖を引っ張り、深海にいる光るクラゲを指さす。特殊な水槽でないと生きられないクラゲがいるのは特別展だからこそで、応利はテンションが上がっていた。
緑谷は少し顔を赤らめてから、「そうだね、綺麗だ」と答えた。クラゲは見ていなかった。
「知ってる緑谷、クラゲの動きって一説によると海流を生み出す要素の1つらしい」
「海流を?すごいや、そんなことあるんだ。あ、でも、確かに北大西洋の寒流ができた理由が、カナダのハドソン湾が古代に極寒の湖だったものが崩壊してハドソン海峡となり、そこから大西洋に冷たい湖水があふれて海流になったっていうのを考えると、そんな理由もあり得るのか」
「え、何言ってんのお前」
ブツブツとする緑谷は相変わらずで、応利は呆れたように苦笑する。別に、緑谷のこういうところは嫌いではない。