お騒がせ会見 デート編−6


その後も「あのジャケット欲しい」と言えばすぐ買ってくれたし、他にも買い物で得たものをすべて持ってくれた。
カフェも穴場のおしゃれで良い雰囲気のところに連れて行って、途中ずっと暴言は出てこなかった。

ただ、暴言を押さえるためか少し言葉が少なかった。それはそれで寂しい。
ふと応利は、一番爆豪にして欲しいことを思い出す。


「ね、爆豪、久しぶりに爆豪の料理食べたい。ホワイトシチューがいいな」

「レストランのがうめぇだろ」

「爆豪が作ってくれたヤツがいいんだって」

「…それなら、買い物してから俺の家来るか」

「いいのか?やった」


爆豪はわざわざ手料理を欲しがることが解せないようだったが、やはりすぐに頷いてシチューを作ってくれることになった。爆豪の家に向かう道すがら、買い物をして食材を買い、タクシーで爆豪が暮らすタワーマンションに向かう。

家に上がらせてもらうのは初めてだが、爆豪の部屋はシックなモノクロの調度品で統一され、とても綺麗だった。まるでモデルルームだ。高層階なので見晴らしもよく、ここから爆豪は下界を見下ろしているのだな、と思うと容易にそれがイメージできた。

リビングでその眺めを見ていると、突然、爆豪に手を掴まれた。そのまま引っ張られ、リビングの壁の押し付けられる。


「なに、っ、」


そして、爆豪は左腕を応利の頭上の壁につき、右腕を顔の真横についた。いわゆる壁ドンというやつだ。その腕に閉じ込められ、目の前に爆豪の逞しい胸元が迫る。


「仮にもお前を好きだっつってるやつの家に上がるとか、危機感なさすぎじゃねぇの」


爆豪のそんな言葉が落ちてくるので見上げると、じ、と読めない目がこちらを見ていた。怒っているわけではないようだ。


「だってお前は俺を傷つけるような真似はしないだろ」

「俺が我慢できなかったらどうすんだ。諦めて自暴自棄になってたら?」

「気絶させる」


応利が個性の使用をちらつかせると、爆豪は呆れたようにため息をついた。


「お前案外、すぐに武力行使に出るよな」

「失礼な、正当防衛じゃん」


応利がそう返すと、爆豪は離れずに少し黙り、そしておもむろに口を開いた。


「お前の強さは正直俺も敵ならうぜぇと思う。個性だけじゃねぇ、メンタルも強いし、でもヒーローらしい優しさもある」

「え、何急に」

「俺やデクたちが迫ってんのに、態度変わらずにいるとこも、俺の誘いに応じてくれたとこも、今日だって無茶ぶりはしなかったし、そういう優しさがお前にはある。……好きだ、そういうところが」


突然応利のことを手放しで褒め始めた爆豪に動揺する。あくまで暴言を吐かないのであって、こんな誉め言葉を積極的に言うというのは今日の宣言にはなかったはずだ。面食らってしまい、しかも壁ドン状態で爆豪に言われたものだから、応利は少し照れてしまった。
ただ、爆豪もこんなことを苦も無く言えたわけではもちろんないようで、爆豪も自分で言いながら耳が赤かった。そういうところは高校時代から変わらないなと思う。

応利は、すぐ目の間にある爆豪の胸板にそっと額をつけるようにもたれた。爆豪の体がぴくりと揺れる。


「爆豪は本質を見れるヤツだから、お前にそう言われると素直に嬉しい。さっきああ言ったくせに、襲ったり絶対しないような、そういう根本は実は結構優しいとこもまぁ好きな方かな」

「…っ、そーかよ」


緑谷や轟にも言ったように、爆豪が真摯な言葉をくれたから、応利もそれに応じて素直な気持ちを告げた。恋愛の好きは誰にも返せないが、そうではない好きはきちんと伝えたいと思った。



その後、爆豪が才能マンらしくめちゃくちゃ美味いシチューを作ってくれて、風呂も入れてくれて、快適過ぎる時間を過ごした。あまりに快適だったので、応利はソファーで目をこする。


「おい、そこで寝んなよ」

「…無理かも…」


美味いものを食って、綺麗な部屋で心が落ち着いてしまうと、疲れもあって非常に眠たい。首が揺れる応利を見かねた爆豪は、応利を横抱きでゆっくりと抱き上げた。安定感のある腕に乗せられて、そのまま応利はベッドに横たえられた。


「クソ、安心したようにしやがって…」


そんなもどかしそうな爆豪の声がしたが、申し訳ないが応利は睡魔に負けてしまおうと思う。なんだかんだ常識人なところがある爆豪の、その不器用な優しさも知っているから、安心して寝ることができるのだ。


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