お騒がせ会見 猫の日編−3


簡単な会見を終えてから、4人はチームアップとしての通常業務に入る。
今日の仕事内容はパトロールだが、4人で揃って行うことになっている。といっても、あまりに目立つ上に今日の企画は全国的に知られているため、どちらかといえば啓蒙の方が大きい。

それぞれポスターを持っていて、爆豪は麻薬禁止、轟は痴漢禁止、緑谷は交通ルール順守、そして応利は敵犯罪遺児基金への募金を呼び掛ける内容だ。
路上で求めに応じて渡すほか、事前に名乗り出た企業のオフィスで代表に手渡しする。企業側のアピールでもあるが、受け取ることでその会社自身も以降の活動にハードルとなる。

混乱になりにくいオフィス街を中心に歩く4人だが、行く先々で人が集まってくる。写真も撮られるため、爆豪は苛立っていた。


「そんな怒るなよ爆豪、轟、ほらあれ言ってやれ」

「皺が寄ってちゃ台無しだぜ」

「殺すぞ」

「それだとかっちゃんいつも台無しになっちゃうよ」

「てめーが一番腹立つなァデク!」


良かれとは特に思わず轟に指示した応利だが、緑谷が天然の煽りをかけて爆豪は更に悪人面になった。この3人は本当に変わらない。

そうやって歩いているときだった。


突然、前方の交差点で、大型トラックが銀行に突っ込んだ。轟音が響き、周囲の人々が一斉に悲鳴を上げる。

瞬時に4人はヒーローとして臨戦態勢となった。他の車が驚いて急停止するのを確認すると、轟がまずトラックを氷結で凍らせた。ここから銀行までは100メートほどだ。
同時に爆豪と緑谷はトラックに向かって飛び上がると、すぐに現場に着地した。その間に応利は周囲の人々を避難させ、停車した車のドライバーを含めて辺りから離れさせる。

悲鳴を上げて人々が出てくる銀行からは、大柄の男がATMを抱えて悠々と出て来た。しかし、凍ったトラックに驚愕する。通りの反対方向へ人々が逃げていくのを確認すると、応利も交差点へと走った。途中、道に逃げ遅れた人がいないか確認する。

一方、爆豪と緑谷は男を掴まえようとしたが、男はおもむろに近くの車を2人に向かって投げつけた。
2人が避けると、さらに地面を思い切り殴り、そこから交差点周辺一帯のアスファルトを打ち砕く。その衝撃で交差点に面するビルの1階部分の窓ガラスが割れ、鋭い音が響く。
轟は咄嗟に近くの車に飛び乗って衝撃波を回避した。

爆豪と緑谷、そして応利も轟の近くにやってきて合流する。男は地面を破壊すると、運転席から仲間の男を引きずり出した。轟は砕けた地面に着地し、2人の敵を睨む。


「どうする」

「あの衝撃波、相当強い…銀行の中に動けない人がいるかもしれないのを考えると、迂闊に出られない」


轟に緑谷は冷静に返した。それは爆豪と応利も同じ考えだった。敵の周囲への影響が大きすぎるのだ。


「おいおい!誰かと思えば猫のコスプレしたホモトリオじゃねぇか!」

「ぎゃはは!今日はワイファイだっけか?ほら早くこっちにWi-Fi飛ばしてくれよぉ!!」


すると2人はげらげらと笑いながらそうのたまった。近づけないのをいいことに煽ってくる。相当自信があるらしい。


「クソが、殺す」


爆豪は相変わらず短気だが、以前ほど飛び出すことはなくなった。冷静さを完全に失うことももうない。
そしてキレたのは爆豪だけではなかった。


「クソが、俺はホモじゃねぇよこいつらなんざ眼中にねぇわ!!」


そう、他でもない応利である。自分のケツを狙う3人と一食汰にされたことが不愉快でしょうがなかった。


「おい、全員遠距離でやるぞ」

「は?」


応利は地面にしゃがんで低く言った。それに爆豪が疑問の声を上げるが、グローブを外して地面に手を触れて、反対側の腕まくりするのを見て合点したらしい。
同じく緑谷と轟も、さすがに雄英の3年間をともに切磋琢磨しただけあって、応利の意図に気づいた。


「了解!」

「俺は援護だな」

「チッ、仕方ねぇな」


爆豪は渋々といった感じで応利の意図に従う。
3人の返答を聞いた直後、応利は肌が触れる地面と空気に対して個性を発動する。


超過圧縮応力(O.C.P.)100mPa(メガパスカル)指向性過圧(D.O.P.)300kPa(キロパスカル)


応利の個性発動と同時に、緑谷は地面にスマッシュを放ち、爆豪は大き目の爆破を放った。
その瞬間、地面の圧縮応力を引き上げていたために緑谷のスマッシュは通常より遥かに強力になり、男たちに向かって先ほどの衝撃波とは比べ物にならない衝撃波が向かった。
爆豪の爆破は、応利が爆風をコントロールして、通常ではありえない非常に直線的な爆風となって男たちに向かった。爆風とは圧力の急激な変化(過圧)のことなので、応利が操れるのである。

爆風と衝撃波が男たちに襲い掛かると、2人は悲鳴を上げて逃げようとするが、間に合わずに吹き飛ばされてトラックに叩きつけられる。その隙に轟が氷結で男たちを拘束すれば、あっという間に敵は行動不能となった。

僅か数分の戦闘だった。

圧倒的な4人の力を見て、通りの離れたところにいた野次馬や、ビルの上層階から見ていた人々が歓声を上げる。
「デク格好いい!」「ショート〜!!」「爆心地いいぞ〜!」という声、そして「パスカル早く爆心地と結婚して〜!」「いやデクと!」などという声も聞こえて来た。

勘弁してくれ、という気持ちはあったが、素早く敵を拘束してやって来た警察に引き渡す轟や、銀行の中を調べる緑谷、ぶっきらぼうに声援に応える爆豪などを見ていると、チームアップで瞬時に敵を倒して事件を解決した実感が沸いてくる。
互いに言葉が少なくても動ける感じや、互いの個性を使って効果的に戦えることは、確かに悪くない。


「…相棒雇うより、こういう形のがいいなぁ…」


まさかそんな呟きが実現する日が来るとは夢にも思わない応利は、仕事の続きだと気を引き締めて、動き回る3人のところに合流するのだった。


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