初デート−1
●入寮前
勝己×主でデート
驚いてから諫めるか心配する、それが応利と勝己の交際を報告したときの反応だった。A組のメンバーは誰も引いたり拒否したりしなかったが、とても心配されたのだ。
それはとてもよくわかる。なぜなら恋人たる爆豪勝己は粗暴で、口を開けば暴言、語尾は必ず罵詈雑言、相槌は不良、睨んだ顔は敵顔負けと心配する要素しかないからだ。
応利と勝己との交際が明らかになったとき、例えば勝己と仲が良い切島は「だ、大丈夫か?」、上鳴は「脅されてんのか!?」、瀬呂は「無理すんなよ」と本当に友人かと疑うような言葉をかけてきた。
緑谷は顔面蒼白で震えると、「ヒーローになりたかった…」とこの世の終わりを悟り、轟は「なんかあったら言えよ」、飯田は「耐えられなくなったらいつでも相談してくれ!」と勝己に傷つけられる前提だった。
さらに女子たちはもっと辛辣だった。口を揃えて「応利君にはもっといい人がいる」というようなことを言って、勝己の彼氏としての可能性を一ミリも信じていなかった。男子たちは言わなかったようなナチュラルな悪口をつらつらと並べている様子は、たった6人しかいない女子がこのクラスのヒエラルキートップであることをまざまざと実感したものだ。
だがそんな彼らも、交際し始めて初日の登校日の放課後から変わった勝己の様子に、しだいに心配から興味へと目の色を変えていった。
カミングアウトしたわりに何事もなく一日を過ごしたその放課後、勝己は「帰るぞ」と一言言って応利が荷物をまとめるのを応利の席の前で待ってくれた。そのあと一緒に帰ったのだが、勝己は普段の歩調を緩めて隣に立って歩いてくれた。最初は不慣れなことだったからか、歩調を合わせるのに少し苦労していたが、そこは才能マン、校門を出る頃には幼馴染の緑谷よりも長く一緒に歩いてきたかのような自然な速度で連れ立って歩くことができたのだ。
そんな様を教室の扉から、廊下から、さらに窓から覗いていたA組は、案外勝己がきちんと応利と向き合っているのを見て安心したらしい。
ちなみに、A組はもちろん知らないが、実は勝己はそのあと応利の家まで送ってくれた。勝己の家はまったく逆の方向なのに、電車に揺られて応利の下宿先まで来てくれたのだ。地方出身の応利は一人暮らしなのだが、雄英から5駅ほど離れている。一方で勝己は40分近く電車を乗り継いで通っている。
さすがに忍びなくて、最寄り駅に着いたところで応利はそれを伝えた。
「別に、女じゃないんだし送ってくれなくてもいい。大変だろ」
「…お前は、俺と帰るのは嫌なんかよ」
「…や、ぶっちゃけ嬉しいけど」
「じゃあいいだろ。送るっつか、俺がいたいだけであってお前のためじゃねぇんだよ」
と、勝己はツンデレに見せかけてデレ100%の回答をしてくれた。クラスでは普段と変わらない話し方をする勝己だが、2人きりのときは罵詈雑言は鳴りを潜め、「お前」という軟化しか呼び方をする。クラスにいるときより喋るスピードがゆっくりで言葉を選んでいるようなので、意識してくれているのだろう。きちんとそこは線引きをしてくれているようだ。
色々と嬉しくなった応利は、そのテンションに任せて「あ、じゃあ家寄ってく?」と誘ったのだが、勝己は「そういうことは段階踏むもんだろが」と睨んできた。つまり家に2人きりになったらもう何をするか分からないということで、そういうお誘いと同義という扱いらしい。段階を踏むというのは応利を気遣ってのことだろう。応利が下というのは決定事項のようだが、そこはなんでもいい。それよりも、やはり応利のために様々な判断をしてくれているのだな、と思ったら、顔がにやけてしまうのも仕方ないというものだった(さすがに間抜け面と言われた)。