此処にましませ−1
●白狐轟・犬神爆豪×神主の夢主
個性とかはない現代和風ファンタジーなパロ目指してます
東京の山間部、埼玉県との県境近くに位置する小さな街には、不釣り合いなほど大きな神社がある。と言っても、やってくる参拝客はそう多いわけではなく、ただ面積が大きいだけだ。
しかも、位の高いところでもないので、地元住民がたまにやってくる程度、それも小さい街なのでその数だって多くない。
そんな神社なので、神主をやっている応利の家、圧気家だけがこの神社を管理している。それも今は父と応利2人だけだ。
稲荷系を合祀するタイプの神社であるここは、一応この地域にかつて流行していた大口真神も祭っている。狐と狼、両方の石像が点々と立っている珍しいところだ。とはいっても、火災で焼けたこともあって、特に社殿が重要文化財になっているとかでもなく、歴史だけがそれなりにある程度。
とどのつまり、大した神社ではないのだ。
しかしそう思っていたのは、案外人間だけであったらしい。
***
秋もそろそろ暮れようかという季節。
体調を崩した父の入院先の病院から帰って来た応利は、境内の自宅に荷物を置いて、制服のまま今日最後の仕事に取り掛かる。
まだ高校2年生の応利だが、一通り神主としての仕事は父に教わっており、きっと自分がここを継ぐのだろうと漠然と思っていた。
じきにブレザーだけでも寒くなりそうな夕暮れの空の下に出て、簡単に参道の掃除をする。箒で落ち葉を掃いて、まとめておくと、今度は稲荷の社に向かう。
参道の東側の脇道から、朱色の鳥居がかの伏見稲荷大社のように何本も続く。高さ2メートルほどの小ぶりな鳥居は、小道に沿ってだいたい3メートルおきくらいの間隔で並ぶ。伏見稲荷大社とはまったく違い、古くボロボロで、その間隔もまばらだ。別に圧巻の光景などでも何でもない。
ただ、鳥居の合間に石の灯篭がいくつか鎮座し、道が山の斜面に沿って上に向かっていく風景は、どこか神秘的で応利は嫌いではなかった。
「…まぁ、今はちょっと不気味か」
応利は空を見上げると、そう独り言を漏らした。
太陽がほぼ沈んだ今、空は赤紫と言えば良いのだろうか。薄暗く、藍ともオレンジともつかない色をしていた。
いわゆる逢魔が時というやつで、こういう空の時間には人ならざるものと会いやすくなるとされる。
そんな薄暗い空の下に朱色のボロボロな鳥居が並び、火の灯らない灯篭が立っている小道は、少し不気味だった。
「なんか出そう」
「なんも出ねぇぞ、俺以外はな」
「………は?」
早く仕事を済まそうと思って口をついた独り言は、上から返事があった。
一瞬動きを止めて、恐る恐る見上げると、一段高くなったところに立つ鳥居の上に、男が1人座っていた。鳥居の上に、である。
右足を柱の間に渡された横柱にかけ、左足をぶらぶらと宙にぶら下げる。立てた右膝に腕を乗せてこちらを見降ろす顔は、あまりに端正だった。
髪は左右で紅白に分かれており、服装は高位の神官のような、藍の上に白い布を重ねたものをしている。首元から胸にかけて、紙エプロンのように赤い布がかけられていた。
秀麗な顔の目元には赤いラインが引かれ、そして腰からは、ふさふさとした白い毛並みの尻尾が7本生えていた。
一目で人ならざる者と分かるその出で立ちは、神性で邪悪なものにはまったく思えなかった。
「な、んですか、あなた……まさか、白狐?」
「広く言えばそうなるな。正確には仙狐と呼ばれる。俺は800年生きて、妖力がでけぇから、七尾になった」
「……神主の子が言うのもあれですけど…ほんとにいるんですか……」
「本当にお前が言うのかって感じだな」
思わず言うと、白狐は少し面白そうに笑った。