此処にましませ 堕ちた神−1
●此処にましませ続き
今回は爆豪メイン回です
以前の駅での事件解決から少し。
まだ応利は、祓い屋の仕事をするかどうか決めていない。平和な世界に生きていた応利には、恐ろしい魑魅魍魎たちを相手取る勇気がまだ出ないからだ。
しかし、勝己や焦凍がいれば大丈夫だとなぜか思えてしまうのも確かで、お金にもなるし、何より誰かのためになれるのはいいことだと思う。
あのあと、駅員の西野には大層有難がれ、翌日には神社に供え物の饅頭を持ってきてくれた。何となく和菓子がいいと思って、とのことだったが、勝己も焦凍も「ラングドシャが良かった」「チッ、フィナンシェぐれぇ持ってこいや」と洋菓子をご所望だった。
そんな神社は今、父こそまだ入院しているが、以前よりにぎやかだった。
***
「応利お兄ちゃん、見て」
「俺のも見ろよ応利兄ちゃん!」
「おー、上手に描けてんじゃん」
居間のちゃぶ台のところで絵を描いていた洸汰とエリは、出来上がったものを早速応利に見せて来た。応利は同じちゃぶ台で課題をやっていたのだが、両横に座る2人が描いた神社の建物を褒める。
両サイドの頭をぽんぽんと撫でてやると、2人とも嬉しそうにしてからまた続きを描き始める。
この2人は、この前駅で浄化した霊だ。コインロッカーベイビーというやつで、悪霊化していたところを祓って、気が済むまでこの神社に置かせている。
この世界での生活に満足したら、自分たちで定められた世界へ向かうだろう。
「おい応利、暇だ」
「ふーん」
「俺にはなんかねぇのか」
「ないよ、何百年と生きてるんだから時間を潰すプロでしょ」
「暇してきたみてぇに言いやがって」
「暇っつったじゃん」
そんな応利たちの後ろの畳で寝そべるのは、高位の白狐である焦凍だ。七つの尻尾が揺れている。振り向きもせずに返せば、焦凍は不満そうにため息をついた。
「おいヨークシャテリア、なんか応利冷たくねぇか」
「犬じゃねぇわクソ狐。でも応利が冷てぇのは認めてやる」
「はぁ?いい大人(数百歳)が何言ってんの?」
焦凍に舌打ちをしながら、勝己は面倒そうに同意した。それに対して、応利は適当にいなした。当然だ、応利は課題をしているし、ちびっこどもは生きられなかった時間を取り戻しているところなのだ。
契約のせいでこれから何十年、何百年と一緒に過ごさねばならないのだ、別に今の一瞬くらいいいだろう。
「やっぱガキ増やす必要なかっただろ」
「うるさいぞ油揚げとドッグフード」
「コンコン!わんわん!」
「おい今なんつったクソガキ」
なおもぼやく2人に対して、今度は洸汰が呆れたようにさらりと暴言を吐いた。エリが可愛らしく重ねたために受け流しそうになったが、ひどい言われように勝己がキレる。焦凍は聞いていなかったのか、尻尾についた埃を取っていた。
「勝己、洸汰君になんてこと言ってんの」
「つかなんでこいつらは応利は名前で呼んで俺らは犬狐呼ばわりなんだ」
「だって犬と狐じゃん」
「狼だわ!!!」
ガウ、と勝己が吠えると、エリは楽し気に笑った。「笑いどころじゃねぇ」と勝己が言っても、何かツボだったのか笑っていた。
それには勝己もそこまで怒ることはせず、ため息をつくだけに留めた。
「はぁ、やっと終わった」
ちょうどそこで課題が終わり、ようやく一息つけると応利は後ろに寝転がった。
するとそこには焦凍の尻尾があり、意図せずしてそのもふもふとしたところに頭を乗せてしまった。その心地よさと温もりに、思わず「うおぉぉ…」と声を出す。
焦凍はやっと終わったとその尻尾で応利の頬を撫でる。一本を掴まえてぎゅうと抱き締めると、これはこのまま寝かねないレベルの心地よさだと痛感した。
「焦凍ぉ…すき……」
「お、そうか。俺もだ」
「おい、お前いいんかそれで」
嬉し気にする焦凍に、さすがに勝己は同情のような、体よく使われる様へドン引きを示した。