PAR AVION−1
●パイロットのツートップ×クルーの主
個性はある社会でのパロ
個性社会となり、科学技術の進歩が止まった昨今。それでも人々は海外に行くし、海外から人が来る。
こと日本においては海上国家であるために、飛行機は必須インフラである。飛行機の性能もまた、前超常時代から変わっていないが、ひとつ大きく変わったことがあるとすれば、機内で唯一個性が使えるポストができたことだろう。
昔は、空飛ぶ鉛の塊に致命傷を与えるには爆弾くらいしかなく、それを機内はおろか保安場内に持ち込むことすらできなかった。
しかし個性が発現してからは、生まれ持った個性だけで飛行機を簡単に墜落させられるようになった。一般的にはそれほどの強い個性であれば楽に人生を歩めるのだが、狂気に満ちた人間というのはいるものだ。
超常黎明期、いくつもの飛行機が個性を使ったテロリストによって墜落し、その度に数百人の人々が命を落とした。人々は恐れて飛行機の移動を避け、飛行機による移動でなければ国内の移動もままらないような国は混乱し、グローバル化した世界は瞬く間に恐慌状態となった。
超常黎明期の大混乱を引き起こした要因の一つが、この航空機問題だったといってもいい。
そこで導入されたのが「個性を使おうとするのを察知する装置」である。
もともと個性犯罪を犯した者を収監する監獄のためにつくられたもので、同じ装置はすべての航空機に義務付けられるようになった。
また、保安検査場にも設置されたためにその段階で計画的なテロリストはすべて一網打尽となり、さらに機内においてもこの装置による警戒がなされることになった。
その新たな職業が、AS(Air Sheriff)航空保安官である。機内において、保安のための個性の使用が許可された職業で、基本的に1便あたり1人を必ず搭乗させなければならない。
応利は26歳、ASとして多くの実績を残していると評価されている若手であり、社内で「いろいろな意味で」有名な社員だった。
***
羽田空港国際線ビル、各会社に割り振られたオフィスにて、出勤打刻をして着替えた応利はキャビンクルースペースに向かう。
「あっ、圧気さん!お疲れ様です!」
「お疲れ〜」
大半が女性のスペースには長机が何列も並び、煌びやかないわゆるCAたちが座る。その中で目立つ男性クルーのほとんどが、応利と同じASである。後輩が嬉しそうに勢いよく挨拶してくる気持ちも分かる。
「圧気さんだ」「あっ、圧気君今日いるんだ」「ラッキー」そんな女性たちの話声が聞こえると、後輩は苦笑する。
「さすがっすね」
「やめろ」
客の前ではぴっしりしているCAたちも、裏ではそれなりに砕けている。もちろん社内なので節度はあるが、そんな小声での色めいた会話を咎める者はいない。
なぜか人気があると後輩も言っていたが、応利はどうせあのパイロットたちのせいだろうとげんなりとする。しかも、今日はそいつらが揃ってしまっているのだ。
少しだけPCでの業務をしてから、同じフロア内のブリーフィングスペースに向かう。このオフィスは、パイロットからCA、コントロールに部長に至るまですべての社員が壁のないフロアで働く。一丸となって取り組むという姿勢を形にしているとのことだ。
普通に話し合いがしやすく意思疎通も図りやすい。
オフィスのほぼ中央にあるブリーフィングスペースは、パソコンがブースで区切られており、そこで立ってブリーフィングを行う。すぐそばにはコントロール担当のスペースもある。
ちらりと大画面に映し出された天気図を見て、列島周辺の天候が良好だと分かる。コントロールは特に慌ただしい様子でもないため、今日は通常通りのフライトになりそうだ。