おお天使様−1


●ヒーロー兼警備員が微総受け
主にA組×個性天使の強面主




USJでの事件の2日後。
早速復帰した相澤は、A組に体育祭の話をしたあと、「あぁ、」と思い出したように告げた。


「あと今日から、新しくプロヒーローに警備員として学内を巡回してもらう。まぁそのなんだ、見た目はかなり敵っぽいようなそうでないような感じだが、驚くなよ。結構繊細な人だからな」

「あ、あの!ヒーロー名を聞いてもいいでしょうか!」


プロヒーローを警備員として使うというあたりがさすが雄英だとA組は思う一方で、相澤にしては珍しく煮え切らない表現も気になった。
敵っぽいようなそうでないような、というのはどういうことか。

それよりも緑谷はクソナードを今日も遺憾なく発揮し、手を高々と挙げて質問した。相澤は淡々と答える。


「ヒーロー・フィラカスだ」

「えっ、フィラカス!?」

「まぁ、本人は生徒にはあだ名で呼んで欲しいそうだ。好きにつけてやれ」

「えーかわいいー」


どうやら知っているのは緑谷だけで、他は首を傾げている。しかし相澤は付け足したあだ名で呼んでやれ、というのはなんだか可愛らしいもので、芦戸がワクワクとしながら囃す。


「なぁ緑谷、フィラカスってどんなヒーローなんだ?」


瀬呂はブツブツとしている緑谷に解説を求める。緑谷はハッとして後ろの席の瀬呂を振り向き、熱く解説を始めた。


「フィラカスは個性が天使っていう不思議なヒーローで、具体的にできることもすごく天使なんだ!でも見た目がすごく天使っぽくない、あ、でも天使っぽいのか?そんな感じで、面白いヒーローだよ!」

「ふわっとしてて全然わかんねぇ!」


いつもは引くくらい詳細な説明をする緑谷だが、その緑谷の説明すら曖昧だ。瀬呂が苦笑すると、相澤が「それなら」とやはり静かに言った。


「実際に見た方がいいだろう。お前らは特に警戒してもらうしな。聖夜」


相澤は名前らしき呼び方で呼びかけた。と言っても、空中に向かって特に大声でもない。
しかし、少しして前方の扉がノックされた。聞こえたのか、と驚いていると、開かれた扉の向こうにいた男の姿に更に全員驚いた。


「呼びましたかイレイザー」

「おう。A組くらいは直接面識あった方がいいと思ってな」


室内に入って来たのは、身長175センチくらい、体格は細身だがしっかりとしている男だった。金髪に青い瞳、コスチュームは宗教画の天使に近い白い布を重ねたもので、背中が大きく空いていてそこから真っ白な羽根が生えている。
確かに、天使のようだ。

しかし、その顔がとてつもなかった。
鋭い目つきと眼光は、目があったら失禁しそうなほど恐ろしく、目鼻立ちはすっきりとしているのに謎の圧があった。その顔だちを見てA組の心が揃う。


(悪魔かよーーーー!?!?!?)


そう、その眼付きは悪魔と言った方が正しい。

上鳴は素早く芦戸に目配せをする。


(あれぜってぇ誰か殺してるよな!?前科もちっつーか、殺したてほやほやだよな!?)

(うんうん!しかも猟奇殺人だよ!なるべく苦しむ殺し方するサイコパス型の目ぇしてるよ!!)


席が前方の2人は若干震えながらアイコンタクトで会話した。これを聞かれたら恐らく殺される。いや、その場で八つ裂きだろう。それほどの恐怖を感じていた。

そんなA組を、聖夜と呼ばれたヒーローフィラカスは見渡す。その鋭い眼光が教室を見渡す様は、誰から殺してやろうかという品定めのようだった。
ヒーローオタクの緑谷ですらガクガクと震えて視線を俯けている。誰も視線を合わせようとしなかった。


「っ!!」


すると聖夜は、軽く息を飲んだ。ギンッという目つきを視界の端の端に収めた上鳴はトイレに行っていて良かったと心底思った。
聖夜はゆっくりと口を開く。ついで、低い美声が言葉を紡ぐ。


「イレイザー、2人、目が合った」

「そうか、良かったな聖夜」

「あぁ!」


どこか嬉しそうな声で、しかも内容は目が合ったというだけ。これだけの恐ろしい目線に目を合わせた猛者が2人いるということだが、恐らくそれは轟と爆豪だ。
マイルドなことを言っている、と俯いていたA組は顔を上げる。


「よろしく」


ニコォ・・・と笑顔を作る聖夜のそれは、「次はお前だ」の笑顔だったため、上鳴は白目を向いて失神した。


prev next
back
表紙に戻る