おお天使様−4
勅使河原聖夜、23歳。今の職場には大いに満足している。
元は、というか今もそうだが、職業はプロヒーローだ。個性が天使というよく分からないものだが、ようは天使っぽいことは基本的にできる。
細々としたそれらを生かしてヒーローになったわけだが、なぜか怖がられる。
いや、理由は分かっている。目つきが悪いのだ。それも凶悪に。敵っぽいと言われるのも仕方ない。
ギャングオルカとは心の友だ。
天使なのに悪魔みたい、とはよく言われたもので、聖夜はからかわれつつも今まで生きて来た。だんだん大人になってからかうことすら怖がられてなくなり、聖夜はすっかりギャングオルカや聖夜を恐れない一部の者としか関わりがなくなってしまった。同業者ですら怖がる者がいるのだ。
しかしその実、聖夜は性格は結構普通だと思っているし、誠実にヒーロー職をまっとうしてきた。救けたら恐怖で失神されたことも多いのだが。
なので、敵っぽいと言われたり、怖がられたりするのは、実はかなり傷つくのだ。あだ名とか名前とかで呼んで欲しいし、自分もそう呼びたい。
こう見えて料理も得意なので、よく甘いものを作っては誰かに振る舞うので、喜ばれるととても嬉しい。
そう思っていても、初対面の人とはまず目が合わない。もともと日本はそれほどアイコンタクトをとる文化でもないが、やはり初対面で目を逸らされると普通にショックだ。こればかりは慣れない。
だから、雄英での警備員の話はさすがに断ろうかと思った。根津校長に誘われて面接をしたが、まだ若い生徒たちに絶対怖がられると思ったのだ。
だが「抑止力としてはとても優秀な顔だけどね」と根津は隠さず言ったので、確かにそれはあるとすんなり聖夜は納得した。むしろこの眼光が役に立つのなら良いことだ。
そう思って、聖夜はこの仕事を引き受けた。
するとどうだろう、さすが雄英の生徒だからか、ヒーロー科かどうかを問わずに聖夜に慣れてくる生徒が非常に多かった。きちんと聖夜の外見でないところを見ようとしてくれているのだとよく分かったのだ。
今では、「天使さん」「てっしー」などというあだ名もついた。
校門の鉄骨の門の上に座って朝の登校する生徒たちを見守っていると、最初は睥睨していると思われていたようだが、夏を控えた今となってはもう挨拶を皆してくれる。
「てっしーおはよ!」とか、「天使さんだ!」とか。
特にA組の生徒は、聖夜さんと呼んでくれる子も多く、グラウンド移動などで外を歩いているところに空を飛んで巡回していると手を振ってくれる。ぶんぶんと勢いよく手を振って呼びかけるきりくん(切島)やでんちゃん(上鳴)、小さくもしっかりこちらを見てくるしょーくん(轟)など、皆実にいい子たちだ。
手を振り返すと「天使!」「今日も可愛いなくそ!」というような声とともに何人か崩れ落ちるようになったが、本人たちは元気そうなので特に心配はしていない。
キリスト教では、1人につき1人の守護天使がついていると考える宗派がある。もともと社会の守護天使になりたいと思っていた聖夜だったが、今はこうして、雄英高校の守護天使のような役割が果たせることが、とても幸せだと感じているのだ。
ただ、上鳴や轟、爆豪などがたまに空いた背中を撫で上げたり、布の下を覗きこんできたりするようなイタズラをしてくるのは、やめて欲しいと思っている。